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3.



…だってまだ好きなんだもの、仕方ないじゃない。
そりゃあ、振られた手前。
「好きになったことは忘れて下さい」
なんて、カッコつけてはみたのだけれど。
だからって、幾らなんでも振った女相手に『恋愛相談』なんてしないでよ。しかも、この状況で。
大体なんでこのひと抱きしめてんのよ、あたしのこと。
だから相手からして間違ってるっつの!
「松本」
「はい?」
「俺はなあ、あの討伐の時、お前が無茶して俺を庇って斬られて、このまま死ぬんじゃねえかって…ものすげえショックを受けたし心配もした」
「そ、れは…」
「そんなお前に俺はどうしても伝えたいことがあった。謝りたいことだって山ほどあった。…が、テメエは今も昔も俺の話なんざまるで聞いちゃあいねえ。だから俺は今、非常にムカついている。…わかるよな?」
「あい、すみません」
隊長に殺傷力の高い目つきでギロリとひと睨みされたあたしは、しゅんと肩を落として俯いた。
てゆーかまさか隊長が、そんなにあたしのことを心配してくれていたとは思わなかった。
嬉しい。
けど、申し訳ない。
てゆーか、…恐い。
確かあたしに謝りたいことがあるとか言ったか、この人は。
でもこれの何処が謝りたいって雰囲気なのよ?
むしろこれからものすごいお説教されそうな雰囲気なんですけども、今あたし。
「…松本」
「っは、はいぃっ!」
呼びかけに。
びくんと背筋を伸ばして顔を上げた。
すぐ目の前には綺麗に煌く翡翠が二つ。
カッコいいな、綺麗だな。
やっぱり好きだな、って。
ちょっと見惚れてたあたしの耳に、信じられない言葉が飛び込んで来たから目を見開いた。
今聞こえたのは実は全て夢まぼろしで、幻聴で。
自分に都合良い解釈を勝手に耳がしただけかしらと、我が耳を疑わずには居られなかった。
だから口に出して呟いていた。
――うそ…、と。









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あきゅろす。
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