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11.


何その追い打ち!?
もしかして、アレか?
無鉄砲にも単身城を飛び出したあたしに、万が一にも何かあって、あの子とトレード出来なかったら困る…とか。
そんな打算でも働きましたか、よもや?!
…ああ。だから大事な『王妃』を失いかけないってことなのかな?
なーるほどね。そう云うことですね、わかります!
ああもうわかった、皆まで言うな。
了解したから今すぐにでもこの腕を離しちゃくれませんかね。
そんで放り出してよ、あたしのこと。
今すぐにでも国に帰れと、心の底から命じてくれたらいいのに、と。
思っているのにどうして胸が痛いんだろう。
今尚こうして抱き締められていることを、こんなにも嬉しいなんて思ってしまうんだろう。
(ほんと、バカ…)
このひとの前ではちっとも泣きたくなんてないのに、涙なんて見せたくもないのに、意図せずぼやけてゆく視界。
その向こうではあのひとが、困ったようにあたしを見上げてる。
何とも苦い笑いを浮かべている。
「あのな、今何考えてんのかは知らねえが、多分…お前が思ってるようなことだけはねえって断言出来るぞ」
なんて、適当なことをよくも言う。
おまけに「だからひとの話はちゃんと最後まで聞け」などと、酷く甘ったるい声で窘められて、慄くより先に薄いくちびるがあたしの眦にそっと触れる。
滲んだ涙の粒を吸い上げる。
「っ…な!?」
何してくれちゃってんですか、このひと!
これから離縁しようって女に、またそーゆー期待持たせるような真似をするとか、ほんっっと人が悪いし質が悪い!
てゆーか、女心をまるでわかってない!
何しろ短い期間だったとは云え、『夫婦』として契り、共に過ごしたひとでもあるのだ。
仮にも夫となったこのひとに、少なからずあたしが好意を抱かなかった筈もない。
ううん。好意…好意どころじゃないくらいには、好きになってたし惹かれてもいた。
とゆーか、現在進行形で大好きですよ!わあ、もう本当ムカつく!
ぶっちゃけこんなバカにされてる今以って、心から嫌いになれない相手から、抱き締められて。肌に触れられて。
未練も露わに胸ときめかない筈が無いではないか。
(なによう、あたしのことなんて、何とも思って無い癖にっ!妹のことが好きな癖にー!)
なのにそんな今更、甘ったるい顔とかしないでよ。
縋るような眼で見て来ないでよ。








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あきゅろす。
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