[携帯モード] [URL送信]
4.


なんでそんな男に笑いかけてんだよ。
なんでンな仲良さげにしてんだよ。
しかもすぐ傍に居る俺に気付きもしねえで。
ンな似合いもしねえしな作って、笑ってんじゃねえよ。
容易く触れさせてんじゃねえぞ、コラ。
面白くねえと思った傍から、ギリと奥歯が噛み締められる。
――その時のことだ。
「ね。どうかしたの、日番谷?」
不意に呼びかけられて、我に返った。
「信号、青に変わったよ。渡ろ」
ぐいと腕を引かれてつんのめる。
と同時に視界から消え失せていた女。
人混みの向こう、遠くなる女の影に、否応にも胸はざわつく。わけもわからず焦りが募る。
俺の方こそが、傍らに女を連れていたにも関わらず。
身勝手は承知の上で、酷く腹立たしいような気持ちになった。
「日番谷、早くしないと映画始まっちゃうよ!」
「…ああ」
ああそうだなと返しながらも上の空。
頭の中は、さっき見かけた女のことでいっぱいだった。
――傍らに、確かに惚れた女が居る筈なのに。







クラスの中、ひとり浮きまくる俺へとお節介にも関わりを持ち、頑なに周囲と距離を置く俺の『殻』をこじ開けた女。
変な女だと思いはしたし、最初の頃こそ鬱陶しいとも思っちゃいたが、何度邪険にしようが懲りずに俺へと話しかけてくる。構おうとする。
屈託の無い笑顔で「日番谷!」と、呼び掛けては俺の手を引く彼女にいつしか俺の方こそが、態度を軟化させていた。
恐らくは、そのペースに巻き込まれることを楽しみ始めていたのだと思う。
そのせいか、あれほどつまらないと思っていた高校生活を、初めて悪くない…と。楽しい、と。
いつしか思えるようになってもいたのだった。
何もかもがつまらないと思い込んでいた俺の『世界』を変えたのは、確かに彼女に他ならない。
だから興味を持った。
気付けば心惹かれていた。
多分、それまで傍に居た松本のことを忘れるぐらいには…。








[*前へ][次へ#]

13/15ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!