[携帯モード] [URL送信]
2.


厭味とも本音とも皮肉とも取れる軽口が、その存在を一瞬にして俺の中から打ち消したのかもしれなかった。
尤も面と向かって言われたその瞬間こそ、大いに呆れた。
その割り切りの良さに。素気無いまでの物言いに。
いっそ鼻白んだと言ってもいい。
軽い言動そのままの、やはりそう云う女だったかと寄りいっそう気が楽になりはしたけれど。
(つまり、最初から見越していたってワケだ)
この関係に、愛も情もないことを。
ただ俺が、あの女を逃げ場にしていただけに過ぎないことも。
互いのこの『関係』が、然程長続きしないであろうことまでも。
やがて他へと拠り所を作り、別の女の存在に遠からず惹かれるだろう俺見越して、ああも容易く受け入れたのだと無意識の内に悟っていたから、最早躊躇いすらも抱かなかった。
「…日番谷?」
だから返答の無い俺へと恐る恐ると云った態で窺うように呼びかけてきた、目の前の女の手を取った。
そう在るべきだと思ったから。
こうも気になる、どうにも心惹かれる存在なのだから。
俺もお前のことは嫌いじゃねえから、…なら、付き合ってみるか?と。
俺を変えた女の手を、選ばない筈がなかったのだった。






*
*


「そりゃあ、いい加減慣れもするわよ。およそそう云う役回りの女なのよ、あたしみたいなタイプはね」

だから今更恋愛に、夢見るようなこともないし期待もしてない。
所詮あたしみたいな女は、恋愛映画の引き立て役でしかないんだから、と。
いつだったかやさぐれたように口にした、自嘲混じりの女の言葉を思い出すこともないままに。
その言葉の本意すら、知ることもないままに全て忘れて違う女の手を取った。
…もう二度と、あの女とは交わることはないのだ、と。
確かに思っていたのに。
この時、俺は。









[*前へ][次へ#]

11/15ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!