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断定不実 1.
※こちらは『愛が痛い夜』の高校生日番谷×OL乱菊バージョンの後日談ネタですので『さよならの変奏曲(※女子高生乱菊ver.)』とはまた別のお話になります。
前作・今作共に当サイトでは少し異質なネタとなりますので、バカップルだったりラブコメ傾向のふたりがお好きな方は基本閲覧注意のスルー推奨。




初めて馴染んだクラスの輪の中。
物珍しさに加えて、存外居心地が良いことに、正直俺自身驚いていた。
そうして興味を持った。
そのきっかけをくれた女に。
俺の手を取り、その輪の中へと導いてくれた隣りの席の女の真意に。お節介に。
だから、「あたしと付き合ってみない?」と。
日番谷のこと…好きなんだけど、と。
その女から、唐突に打ち明けられてまた驚いた。
けれど同時に「ああ、やっぱりな」と思いもしたし、だからって悪い気もしなかった。
尤も、隣りでいつもうるさいくらいに騒ぎ立てている女が顔を赤くして、照れたように俯いて。
普段と違う一面を俺へと垣間見せたその影響も、少なからず否めないでもなかったけれど。
それでもすぐに返事を口に出来なかったのは、『あの女』の存在が不意に脳裏を過ぎったからだ。
この一年余り、ずっと肌を合わせて時間を共有してきたあの女。
七つ年上で、自由で気ままで気まぐれで。
良くも悪くもあけすけに開けっぴろげで、大人の癖に、時々子供みたいにわらうヤツ。
だけど他の大人みてえにいちいちつまらない詮索もしなけりゃ説教もしない、況してや俺を気味悪がるようなこともない。
「その顔立ちで、天然ものの銀糸に緑眼なんて最高じゃない?」
いい目の保養になるわよアンタ、と。
俺を見て、あっけらかんと笑った女。
一度戯れに身体を繋げてのち、再びふらりと部屋を訪れた俺へと然して驚いたような素振りも見せず、まあ上がんなさいよと中へ招き入れ、抗うことなく身体を開いた女。
そんなことが幾度か続いた後、思いがけずに合鍵を渡された。
部屋への出入りの自由を許された。
「あたしでいいんだったら暇潰し程度に遊んであげてもいいわよ、別に。アンタ結構イイ男だし、可愛いし」
まあ、気が済むまで遊びにいらっしゃいと、ポイと放り投げられたこの部屋の鍵。
まるで『受け取るも受け取らないも自由』と云ったその態に、呆気に取られなかった筈もない。
けど、そんな風な女だったから、一緒に居ても気を遣わなくても済んだ。
なんつーか、…逆にすげえ楽だと思った。
あの女も、あの女の部屋も、『逃げ場』にするにはもってこいだと思っていた。
だからと云って、付き合っていた…とは言わない。
惚れていたとも思わない。
ただ、その居心地の良さに溺れていた。依存していた。
あの女の住まう部屋に。
あの女の、自由で気ままで気まぐれな態度に。
それから、あの女のからだにも。
暇さえあれば入り浸ったし、肌を重ねた。
時に一緒に出掛けもしたから、傍から見れば充分付き合ってるの範疇だったのかもしれない。
今となっては良くわからない。
あの関係を「付き合っている」と称していいのか甚だ疑問は残るのだけど、少なくとも嫌いじゃなかった。アイツと居るのは好きだった。
けれどこうして新たに『居場所』を見つけて、その居心地の良さに浸ってる内に、以前ほどあの女との逢瀬を必要としなくなったのもまた事実ではあった。
だからすぐにも忘れてしまった。
脳裏を過ぎったのはほんの一瞬で、すぐにも俺の中から打ち消されてしまった『女』の存在。
合鍵を返してしまった今、俺とあの女を繋ぐものなど何も無いと、無意識の内に働いた打算ゆえかもしれない。
若しくは初めて鍵を手渡されたあの日、女の口にした『言葉』が頭のどこかで引っ掛かっていたがゆえかもしれない。


――まあ、飽きたら適当に距離置いてちょうだい。慣れてるから、そーゆーの。









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