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8.


「ンで、いざ会ったらあんた全然態度普通だし。やけに甲斐甲斐しいし可愛いし、うっかりキスなんてしたらすっげえ物欲しそうな目で俺見てくるし。ンなもんやりたくならねえわけねえだろが」
ムダに盛ってて悪かったな、と。
ムッと続ける声を遮るように、勢い余ってくちづけて。
こみ上げる感慨のままに口走る、今日二度目の…。
「うう…、だいっっ好き!!」
「お…おう」
そのままぎゅうと抱き着いたなら、どこか当惑したような顔をしつつも、もう一度。
あたしを抱き締め返してくれる、やさしい腕。
「うん。ほんとはあたしも今夜、すっごくすっごくとーしろーくんに会いたかった!だからこうして会いに来てくれて、すっごい嬉しい!ほんと大好き!」
「わ…わかったから、落ち着けって松本サン」
あーもうワケわっかんねえと苦笑いを零しながら、それでもはしゃぐあたしを受け留めてくれる。
…安らぎ?癒し?
ああもう、やっぱり大好きだーーっ!!って気持ちにさせてくれる、この子のことが大好きだなあ。
やっぱりあーんな勘違いも甚だしい、胡散臭いイケメン営業マンなんぞより全然カッコいいよ。愛しいよう。
…そりゃあ、いずれは他のわっかいお嬢さん方に目移りされたり、時に浮気されたり?痛い目見たりしちゃうかもしれないけれど。
今が幸せならそれでいいかな?別にいいかな?
仮にそうなったらそうなったで仕方ないよねと改めて、決意も新たに腹を括った矢先のことだった。
それまで苦笑いを浮かべていた筈のとーしろーくんが、翡翠の瞳をすうっと細めると、徐にあたしに問うたのである。
曰く。
「松本サンさあ、飲み屋の女将になりたくね?」
(なな、なんですとおおおお!?)









出し抜けに何をいきなり、と。
まんまるに瞠った眼差しの向こう、右手を取られて、甲にそっとくちづけられる。
「酒、飲み放題だし、あんたの好きな卵焼きだって毎日ってぐらい作ってやる。他に食いたいつまみがあるんなら幾らだって作ってやるしリクエストだって応えてやっから、せめて俺が高校卒業するまで、…あと一年とちょっとだけでいいからさ。俺のこと、見捨てないで待っててよ」
――そんでいずれは俺とあの店で一緒に働かねえ?
などと、ちょっぴり窮屈なぐらいの腕の中。
睦言宜しく甘い言葉で囁かれて、頷かないあたしが居るだろうか?…いや、いないでしょ!








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