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7.


雪、降ってんのに。寒いのに。
ホントだったら金曜に会う筈だったのに。
予定覆して一時間半も外であたしを待ってたのって、そーゆーわけかな、もしかして。
なあんて思ってしまったのだった。
(うわあ、本当に可愛くないな、あたし!)
こんなあたしを可愛いとか、一瞬でも思ってくれちゃったらしいこの子の目ってばホントに大丈夫?
視力2.0とかかなりの確率で胡散臭いよね。関係ないでしょ、それ絶対。
でもまあ別にいいけど。
だってあたしも会いたかったから。
会ってぎゅうってして欲しいなとか思ってたからいいんだけど。
なのに、ほんのちょっぴり悲しかったりするのは何でなんだろう。
ほんの少しだけショック受けてるのって何でだろうね。
責める意図はなかったものの、思わず問うてしまった先。
「ンなわけねえじゃん」
あたしの肌へと歯を立てたまま、何言ってんだと一蹴されて、思わずぱちくりと瞬いてしまった瞳。
「へ?何…違うの??」
「全然違げえよ。つーか、松本サンがあんなメール寄越すからだろ」
「メール?…って、卵焼き?」
昼間送ったメールを思い起こして問い掛けたなら、それもそうだけどそうじゃねえ、と。
良くわからない答えが返ってきた。
だからやっぱり良くわからなくて、首を傾げてしまったのだけど。…だけれども。

「松本サンさあ…昼にいきなりあんなメール送りつけてきて、挙句返信ねえとか気になるに決まってんだろ。もしかして松本サンの何か気に障るようなことでもしたのかって思うだろ」

だからちょっとだけ気になって、学校終わってから速攻会いに来た、と。
思いがけずにのたまってくれた、寒さゆえでなく羞恥で頬をほんのりと染めた目の前のとーしろー少年の言葉に、当然ながらノックアウトだ。心臓をぎゅうと鷲掴みにされた気分だ。
さっきまで抱いていた憂いなんてものは何処へやら。
それこそ、昼の不毛なやり取りすらも吹っ飛ぶほどに、今あたしが目の前のこの少年に惚れ直したのは言うまでもない。
(なあんだ、ちゃんと気付いてくれていたんじゃない!)
気の利いた言葉こそ返って来なかったメール。
だけどその後のあたしの反応で、しっかり察してくれていたんじゃないよ。
しかも会いに来てくれたんだよー。
こんな寒い中、わざわざあたしの家まで会いに来て。
しかも残業でいつもより遅くなったのに、待っててくれた。あたしの帰りを。
それこそ、忠犬ハチ公宜しく待ってくれていたのだ、この少年は。
そんなもの、心打たれない筈もない。
胸キュンの余り、愛おしさが溢れ出さないわけがないではないか。








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あきゅろす。
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