[携帯モード] [URL送信]
3.


いやでもそうか、もし万が一結婚したら、飲み屋の女将か。
とーしろーくんと一緒にお店の切り盛りしちゃうとか。
…うん、悪くないかな?なんて。
うっかり思っちゃいましたけど、何か?
(いやまあ、それこそありえない話ですけれども!)
何しろまだまだ高校生だしね!花の十七歳だしね!!
さすがにあたしと結婚…なんて。
ないわー、絶対考えてなんてないわー。
年齢的にも結婚自体まだまだ先の話だと思うし、そもそもあっちにそんな気あるからもわからんですよ。
悲しいかな、そこまでお付き合いが続くかどうかもわからんのですよ。
でも正直なところ、あたし的には大歓迎です。
むしろ可能であれば全力でお嫁に貰って頂きたいです。
絶賛姉さん女房希望の所存であります――なのだけど。
弱ったことに、ちょー盛り上がっちゃってる彼女達ときたら、そんなあたしの意気込みすらも「信じられない」と軽く一蹴してくれやがるものだから、これにはさすがに大いに凹んだ。泣きたくもなった。
美味しい筈のパスタですらもすっかり受け付けられなくなって、何だか今は無性にとーしろーくんお手製の卵焼きが食べたい気分になった。
だけど今日はまだまだ水曜日。
飲みに行ったところで今夜、あの子がお店に出ている筈もない。
…だけど、やっぱり。
(会いたいなあ)
吐き出す重たく深い溜息。
未だ件のイケメンくんの話題できゃあきゃあと盛り上がってる同僚達を他所に、ひとり虚ろな瞳で傍らの携帯を手に取って。
暫しメール画面を弄ってから、結局ぽちりと送信していた。
『卵焼き食べたい』
昼日中から送りつけたのは、素直じゃないにも程がある、「今夜会いたい」のメッセージ。




*
*


卵焼きが食べたい(イコール、今夜会いたい)との我がままを言ってみたはいいものの、返ってきたメールはやっぱりと、予想に違わず幾分つれないものだったことに胸中ガクリと項垂れる。
『明後日店で食わしてやるよ』
…って。そうじゃねえええええ!!!
いや、うん。金曜会えるのはすっごい嬉しいんですけどね!
卵焼きだって、すっごいすっごい楽しみだけども!!
そうじゃないのよ、違うのよう!
あんまり寂しい気持ちになっちゃったから、今すぐ会いたい。今夜あたしに会いに来て!って意味でメールを打ったつもりだったのよう!
五分と経たずに返ってきたメールの内容に、がっくり項垂れながら画面を閉じる。
最早メールを打ち返すだけの余力もありませぬ…。
いやまあでもしょうがないのかな?
何しろ相手は十七歳だ。年下だ。
花も恥らう高校生だ。
しかも女の子と付き合うのはあたしが初めてと云う、まさしく恋愛初心者なのだ。
(うん、多くは望むまい)
だから経験豊富で百戦錬磨みたいな『大人の男』のような反応を望むことからして間違ってるし、そーゆー女の扱いに慣れてないところが可愛くもありこそばゆくもあるのだから。
(そう、わかってるんだ。ちゃんとわかってるんだよおおおお!)
それでもね、やっぱりこんな落ち込んだ時にはちょっと気の利いた返事が欲しいな・とかって、思っちゃうじゃない。女の子だもん!
そこらへん、言わずと察して欲しいなって思うじゃないよっ!
…ああでもそんな愚痴、このメンバーを前にぶち撒けた日には、そら見たことかとあげつらわれるのは目に見えてたから、黙って涙を飲み込むより他はない。
しょんぼり肩を落としたまま、ああ…早く金曜が来ないかなあ、と。
週末を心待ちに午後の仕事に勤しむより他はない。
――そう思っていたのだけれど。









[*前へ][次へ#]

6/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!