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【side吉良】@
※またも懲りずに『高校生日番谷×OL乱菊』のパラレルネタです。
どちらかと云えば、修兵が可哀想なことになってま(ry
吉良視点→松本視点→日番谷視点の三本立て。



何がどうしてこうなった!?…てのが、今の僕の正直な感想だ。
大学時代からの腐れ縁でもある檜佐木先輩に、総務の華と呼ばれる松本さんとの仲を取り持って欲しいと頼まれたのは、ただ単に。
この春入社したばかりの僕が、研修を終えたのち松本さんのいる総務課へと配属されたからに他ならない。
と言っても、元々先輩と松本さんは、入社以来の気の合う飲み仲間ではあったらしい。
だから比較的仲は良好。
但し、松本さんにとって先輩は、あくまで『飲み仲間』のひとりに過ぎず、それが先輩には大いに不満であるらしいのだ。
(正直「無謀だなあ」と、思わないでもないんだけど)
おまけに何の因果か松本さんは僕の教育担当までをも兼ねていて、この二ヶ月ほどで随分扱かれもしたのだけれど。
その分打ち解けるスピードも大層早かった。
どうやらそこに目をつけたらしい営業二課の檜佐木先輩に、松本さんとの仲を取り持って欲しいと泣き落としで頼み込まれた次第だった。
(正直、全く以って気は進まない)
そもそもあれだけの美人で仕事の出来るひとなのだから、いくら社内で浮いた噂ひとつ聞かないにしても、社外に恋人のひとりも居たところで不思議はない。
むしろいない方がおかしいだろうと思うのだ。
けれど先輩は頑ななまでにそんな筈はないと言い張っている。
彼女との明るい『未来』を夢見てる。
…重ねて言う。
僕の見る限りどう考えても、松本さんの目に檜佐木先輩は『男』としては映っていない。
むしろ眼中にないと言うべきか…。
ゆえに、到底報われるとは思えない。
だから面倒臭さも相俟って、諦めさせようとそれとなく…一緒に飲みに行った際などに、遠回しに諭したことも一度や二度のことじゃない。
けれど頑として耳を貸さない、貸そうとしない檜佐木先輩に、僕の話が通じることはなかったのだから、…仕方ない。
絆される形で結局は、松本さんとの仲を取り持つ協力に頷かざるを得なくなったのだ。
日常会話の中でさりげなく、先輩の名前を挙げては長所を話して聞かせたり、社員食堂で隣りの席を譲ってみたり、それこそ三人一緒に飲みに行くようなこともした。
普段接触のあまりない社内でも、ふたりが近付く機会を与えもした。
このひと月余り、出来る限りの協力はしたつもりだった。
それでもやっぱり松本さんが、先輩を飲み仲間以上の目で見るようなこともなく。
況してやふたりの仲が進展するようなこともなかったのだからお手上げである。
(いい加減懲りてくれないかなあ)
最早口を衝いて出るのは、重いため息ばかり。
そんな僕の心労を、知ってか知らずか先輩は、またろくでもない計画を立てて来たから眩暈がした。
「バーベキュー、…ですか?」
「おう。同期の仲いいヤツら誘って・な!どっかみんなで集まって、肉食いながら飲み倒そうぜ!」
意味ありげなウインク付きのそのお誘いに、正直嫌な予感しかしなかった。
そもそも何でバーベキュー…。
だったら焼肉とかでいいじゃないですか。
ジョッキ片手にホルモン食ってりゃいいじゃないですか。
それをわざわざ休日の昼間使ってバーベキューとか、割と本気で気が進まない。
そもそもそんな話に松本さんが乗ってくるとも思えない。
…ああでも、実際どうだろう。
松本さんはお酒が好きだ。
けれどお酒を飲むこと以上に、美味しいものを楽しく食べることが大好きなひとだ。
だから案外「あら、いいわねえ!」なんて乗ってこないとも限らない。
それに、食べるのは好きでも料理は余り得意じゃないらしい。
(まあこれが、天は二物を与えず…ってヤツなんだろうな)
だから料理の苦手な松本さんは、料理の出来る男(=俺)に弱い筈だ!と云うのが、特技が料理な檜佐木先輩の持論であり。
そんな自分の特技を披露するには、普通の飲み屋での飲み会だったり焼肉なんかよりもバーベキューの方がいいだろうと云う、ある種緻密な計算の上に練られた『作戦』でもあった。
ゆえに、メンバー集めにも檜佐木先輩の采配が最大限に振るわれており、比較的松本さんと仲の良い…けれど決して男女の仲にはなり得ないだろう人選が行われた。
即ち、営業二課と総務課の、普段から仲良くしている飲み仲間に加えて、松本さんと仲の良い秘書課の伊勢さん。
プラスαで僕と同期の雛森くんの従兄弟と云う、檜佐木さんにとってはそれこそ『安全牌』以外の何ものでもない高校生と云う、実にセコイ…いやいや、本気モードのメンツである。
聞けばその彼、この春から両親が仕事で海外赴任している為、従姉妹である雛森くんの家に今は間借りしながら高校に通っているらしい。
「も、愛想は無いし引き篭もりだし、いろいろ将来が心配なんで、いい機会だしちょっと連れ出してみようかな、って」
苦笑する雛森くんの隣りでぶっすりとした渋面を作るその少年は、名を日番谷冬獅郎と言った。
空座第一高校の二年生で、背はやや低いものの、銀髪緑眼と恐ろしく人目を引く整った顔立ちをしている。
僕としては正直、幾ら年下の従兄弟とは云え、一緒に住んでいるとのことで雛森くんとの仲が気になったりもしたのだけれど。
ひとりひっそりとやきもきしたりもしたのだけれど。
実際ふたりが一緒に居る場面を目にすることは余り無く、むしろ…。
「アンタ、顔は可愛いけど性格は捻じ曲がってそうよねえ」
「うっせーよ、オバサン」
見るからに犬猿の仲――としか思えないのだけれど。
この日一番、日番谷くんを構い倒していたのは、意外なことに松本さんだ。
と言っても、全くの初対面だと云うのにまるで水と油のようなふたり。
バーベーキューの間中、寄ると触ると小競り合いの怒鳴りあいになると云う始末でもあった。
だから当然檜佐木さんも、当てが外れたことに当然ショックを受けてはいたのだけれど、それでもその場は「まあ、しょうがねえよな」と我慢していた。
また次の機会にでも松本さんとの仲を一歩進めようと画策していたようなのだけど。…だけれども。








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あきゅろす。
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