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3.


(っだ、大丈夫!慌てず・騒がず・痛がらず、そもそもそんな恐ろしいことをこのひとがあたしにする筈ないじゃない!)
だってやさしいひとだもの。
「…まあ、アレだ。とりあえずお前は卯ノ花が言った通り、大人しく俺に身ィ委ねとけ。悪いようにゃあしねえよ」
ものすっごい楽しげに、何とも不穏なことを口走ってはいるけれども!
きっと大丈夫と自分自身に言い聞かせた。
そうして何もわからないままに、『初夜』の儀式を進められて行く内に、ふと気が付くにいたったのだった。
(え?これって…『お清め』と一緒なんじゃない?)
血の施しを含まない、けれど深いくちづけに始まり、着物を乱され肌を暴かれる。
あのひとの手のひらが、硬い指先が。
時に薄いくちびるが、あたしの肌をゆっくり辿ってゆく。
触れるだけでは飽き足らず、きつく吸い上げ咬み跡を残す。
だから思わず拍子抜けをした。
何しろ手順は何ひとつとして『お清め』の時と変わらない。
(あれ?もしかして途中までは一緒…とか?)
そんなバカなと思いつつ、疑いたくなるのも無理はない。
但し、あたしを見下ろすその顔は、いつも以上に笑みが深くて楽しげで、時に酷く意地悪だ。
しかも触れる指先も舌先も、いつも以上に執拗でねちっこい。
だから頭はくらくらするばかり。
息は上がるし、溢れる声を抑えることすら出来やしない。
とうとう我慢も限界で、縋るように伸ばした腕は必死になってあのひとの背にしがみ付くことしか出来なくて。
時々爪を立ててしまうあたしに、笑いながらくちづけをくれる。
我慢しなくていいから声出しちまえと甘い誘惑をくれるばかり。
「…て、ゆーか。これってやっぱり『お清め』…ですよね?」
「なんだ、やっと気付いたのか」
意外と時間が掛かったな・ってあのひとが笑ったのは、下肢を貫かれて間もなくのことだ。
(いやいや、ご冗談を!出来ることならもっと前からツッコミたかったですよ、当たり前ですよう!)
だけど声にならなかった。
声を掛けるだけの余裕もなかった。
況してや呼びかけひとつしようものなら、「なんだ足りねえのか」とすぐにもくちびるを塞がれて。
言葉ひとつも発せられないほどに、翻弄されてましたから、あたし!
…ああ、だけど。
やっぱりこれってば『お清め』だったんじゃないですかあ。
てゆーか、『お清め』だったらこれまでも、幾らもしてきたじゃないですかああああ!!と、うっかり叫び出しそうになったのだけど。









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あきゅろす。
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