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2.


「っと、とーしろー様あっ!!」
「うわっ!つか、何だよいきなりでっけー声で、お前」
「いえ!あの…その、今から初夜…なんですよね?!」
「ん?ああ、そうだな。それがどうかしたか?」
「や。初夜って、確か…その、夫婦が子を生す為の儀式…なんですよねっ!?」
「……儀式って。あー…まあ、ンな大層なもんでもねえが、強ち間違いってわけでもねえ…か?」
そこまで言って漸く察したらしいあのひとは、はたと目を瞠ると「お前、もしかして初夜がどんなもんか知らねえのか!?」と、単刀直入にも問うてきたから「…ハイ」と小さく項垂れた。
「卯ノ花様が『慌てず、騒がず、痛がらず、冬獅郎様にその身を委ねればいいんですよ』と仰っていたんですが、いいいいったい何されちゃいますかね、あたし!?」
痛いですか、恐いですか?
てゆーか、何で冬獅郎様ばっかり知ってんですかあああ!!と堰を切ったように詰め寄ったなら、それまで唖然としていたあのひとが、突然「ぶはーーっ!!」と噴出した。
しかも、爆笑だ。
それも、お腹抱えて笑ってるよ、このひとってば!
(えーーっ!?)
「ちょ…なんでそんなバカ笑いしてんですか!やだ、酷い!うわ・もお、幾らなんでも笑い過ぎーーっ!!っもおおおおお!!!」
転げまわるほどバカ笑うってどーゆーことだ?!
てゆーか、あんまり過ぎないか、それ?!
やだもう、キライ!と涙混じりに叫んだあたしを覆い被さるように抱き締めて、
「ああ、悪リィ悪リィ。つか、逃げんなって」
尚もくつくつと喉を震わせながら、あたしの肩口に鼻先を埋める。
そうか、お前。知らねえでいたのか、と。
会得がいったとばかりにひとり、うんうんと頷いていたあのひとは、そこまで言うならてっきり『初夜』のあれこれを改めてあたしに教えてくれるものかと思ってたのに。
あろうことか、
「ま、知らねえんなら知らねえままってのも悪かあねえか」
と、意地悪くもにんまり笑ってのたまった。
ギラギラと光る眼であたしを射竦めてしまったから、文句のひとつも言えなくなった。
既に腕の中へと捕らえられた今となっては、逃げ出すことすら最早叶わなかったのである。








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あきゅろす。
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