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12.


ぎゅうと肩を抱き込んだまま、その耳元へと低く命じる。
すっかりと息が上がってしまっているらしい松本の目は、とろり蕩けるように惚けていて、どこか焦点も曖昧のまま。
きっと、今。
俺に何を言われているのかさえも理解出来てはいないのだろう。
それでも微かに俺へと応える。
「はい、…とーしろーさま…」
息も絶え絶えの掠れた声で、仰せのままにと御意を示す。
「憶えておけよ。俺の伴侶となるのはお前だけだ。お前以外の花嫁なんざ必要としねえ。だからお前も俺以外の誰にも心を移すな。傍に居ろ。…何があっても離れてゆくな」
――そしていずれは俺の子を産め。
産んでくれるな?と念押すように問い掛けたなら、とろり焦点のぼやけていた松本の目に、光が。輝きが、緩やかに戻る。
驚きとなって見開かれたその瞳に、にんまりと笑う俺を映し出す。
「…っえ?!あああ、あたしっ!?」
「おう。このナリだし、今はまだちいっとばかし時期が早ええけどな。いずれ俺のナリが育ったら、その時はお前に産んでもらう。だからもうちょっとだけ待ってろよ」
くつと笑って目を眇めれば、大きく瞠った松本の目が、更に大きく見開かれる。
ついでにぽかんと口までも。
「……あ、たし。供物、なのに?」
「まだ言うか、テメエ。あのなあ、供物なんかじゃねえだろ今のお前は。だいたい俺に捧げられた時点で俺のモンだって決まってんだ。なら、俺のモンらしく好きにさせてもらう。…不満か?」
「とっ…とんでもないっ!!てゆーか、その…なんだか、夢…みたいで…」
夢みたいだと口にして、何故か泣き出しそうにへらりと笑った松本の顔は、やはりすぐにもくしゃりと歪められた。
声は言葉を為さなくなり、やがて嗚咽へと姿を変えた。
「だっ…だって、あたし、とーしろーさまのこと、大っ…好き、だから。ずっと…ずっとお傍に居たいからっ!」
うあああああん!と、デカイ図体で感極まったように泣き叫んだ松本の、しとどに濡れる眦に。
くちびるを寄せる。
そっと涙を掬い取る。
「ま、後もう二、三十年もすりゃあ、さすがにお前のナリに追い付けんだろ。そしたら祝言を挙げるとするか」
どうせ先は長いんだ、と。
笑った俺の腕の中、松本は何度も首を縦に振る。
涙はとどまるところを知らないらしく、今も松本の瞳を、頬を、しとどに濡らす。
しょっぱい筈の松本の涙。
だが、施しを伴わないくちづけ同様、歓喜に濡れるその涙すらも甘いのだ、と。
この日初めて俺は知ったのだった。







end.



元々は久々に読み返してた『皇国の守護者』の中の天龍カッケー(*´д`*)的な萌えから派生しただけの妄想です。
若しくは竜神の日番谷に、「姓は○○、名は○○」って天龍の台詞を言わせたかっただけと云う(w; そんだけでこの妄想…アホです。アホの極みです;
後、詳しい設定とか全然考えてないのでホント適当です。ツッコミどころ満載ですが、そこは敢えてスルーでお願いします(笑えない)
そんな感じで残念妄想に長々お付き合いくださりありがとうございましたーー!\(^o^)/
とか言いながら、念願叶っておっきく育った日番谷の後日談ネタとかもちょっと書けたらいいなとか思っているので、万が一続いてたらすみません(汗)
そういえばこれ、1/31が愛妻の日ってことで急遽更新したんでした。もう2月だよ〜!遅刻完成マジさーせん><;


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あきゅろす。
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