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11.



「…傍に居ろ。他のヤツに施すつもりは微塵もねえし、この神域にお前以外の誰も留め置くつもりはねえ」
他の誰も要らねえ、と。
改めて口に出したなら、…嬉しい・と。
更に強く抱き締められた。
そうして、嬉しい!大好き!と。
ガキみてえにはしゃいでは、俺へと頬擦りしながらあんまり何度も繰り返すから。
見目美しい大人の女に育った筈の松本が、昔みてえに豪く可愛く幼く見えて、思わず苦笑がこみ上げた。
わらう松本があんまり可愛くって、愛おしくて。
わかったわかったと苦笑混じりにくちびるへと触れたなら、途端ぱちくりと瞬く瞳。
「ほ…施し?」
「違げえ。つーか、お前もさっき俺にしたろ」
「あ!あれは…その、あたしを失いたくない…って言って下さった冬獅郎様の言葉が嬉しくて、つい。その、調子に乗っただけってゆーか、ちょっと勢い余って暴走しちゃったってだけってゆーか…」
ごにょごにょと真っ赤な顔で言い訳を連ねる松本にまた、苦笑がこみ上げたのは言うまでもない。
「わっ、笑わないでくださいよう!」
「ワリ。…けど、俺も同じだ。あんまりお前が嬉しいだの大好きだのと可愛いことばっか言ってくれっから、何かすげえ…触れたくなった」
言うが早いかもう一度、改めてくちびるを重ねたならば、おずおずと呼応するくちびる。
長い睫毛を震わせながら瞼を閉じて、俺の舌を迎え入れる。
初めて加護を与えた日から二十余年。
それこそ、数え切れないぐらいに繰り返してきた筈の行為であるのに、『施し』を介さぬ松本とのくちづけは、恐ろしく甘く心地良いような気がして、知らず内に貪ることに夢中になった。
時折耳を擽る松本の漏らす甘い吐息と、縋るように力を篭める腕の力に、尚煽られてこみ上げる熱情。
漸くくちびるを離した頃にはすっかり息が上がってしまったらしく、くたりと俺へともたれ掛かった松本の肌は、上気したようにほんのり赤く色付いていた。
――本当は。
もう少し時期を見てから伝えるつもりでいたのだけれど。
後もう少し俺の背が、松本に追いついてから伝えるべきかと迷っていたのだけれど。
想いを通わせ合った今、待つことに何ら意味など見出せない。
見出す必要もないと吹っ切れたように口にしていた。切り出していた。




「俺に永遠の貞節を誓え、松本」











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