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4.


カラカラに渇いた喉。
ガサガサのくちびるを潤すかのように、しっとりとした松本のくちびるに押し当てる。
首裏に感じる、心地よい圧迫感。
しなやかに伸びた松本の腕が首に絡みつき、促されるまま俺はゆっくりと身体を前へと倒した。
深く…探るように、くちづけを交わす。
ぽかりと開いた口腔の先。
初めて触れる、松本の舌。
僅かな躊躇いの後、倣うように後を追いかけて。
絡めあって、互いを味わう。
ざらり、ぬるりとした舌先の感触に、背筋がぞくりと粟立った。
仰け反った白く細い松本の喉元。
浮き出た鎖骨。
上気した頬。
乱れたシャツの襟から覗く、なだらかで白いまるみが煽るように焦燥を駆る。


「と…しろ?」


とろとろに蕩け切った、あおいひとみと、溢れる呼吸。
艶やかに光る、濡れた くちびる。
ちろりと覗く、あかい 舌。
眼前で。
露になったその肌に、触れる前に…どうしても告げて置きたいことがあった。
目を、捉え。
好きだ、と。
ちゃんと…すげえ、好き、だから、と。
震える声で。
掠れた、低い、音域で。
松本の形良い耳に、注ぎ込む言葉。


「言っとくけど。くだらねえ興味本位だけでするんじゃねえからな」


松本を泣かせた他の男達みてえに、身体が目当てなだけじゃない。
況してや泣かせたいわけでもないし、好奇心からってだけでもない。
…好きだから。
触れたいと思うし、繋がりたいと思うのだ。
それだけは…どうしても松本に知っていて欲しかった。



拙い言葉で…けれど懸命に伝える俺に、松本は少しだけ泣き出しそうに はにかんで。
知ってるよ、って。
頼りない俺の薄い胸元に、そっと頭を預けると。
「あたしも…だいすき、だからね」って。
くぐもった声で言った松本、は。
そのあと「あたしこそ…初めてじゃなくて、ごめんね」って、小さな声で囁いたけど。
俺は聞こえない振りをして、代わりに松本の額にくちびるを押し当てた。
(つか。今更気にしてねえし、そんなこと)
もとより承知の上で手を取ったのだ、この おんな の。
ならば、お前が過去を悔いることに、意味なんて、ない。



*
*

汗でべたべたに張り付くTシャツを脱ぎ捨てて。
それから松本に請われて部屋の明かりを小さく落とした。
ついでに開け放したままだった窓を閉めて、カーテンを引く。
月明かり射す窓越しに、何気なく視線を走らせた先。
薄いカーテンの向こうに一瞬、通いなれた校舎を小さく視界の端に捉えて驚いた。
ああ。この部屋からだと、案外良く見えるんだな、と。
これまで幾度となく訪れた部屋。
だけど一度として気に留めたことなどなかったと云うのに。

もう、二度と。
通うことのない校舎。
顔を合わせることもない、担任。
そのせい、だろうか。
シャツのボタンを全て外した松本の身体に圧し掛かろうとしたその瞬間、あのオッサンの言葉が不意に脳裏を横切ったのは。

「とーしろー?」
「…ワリ。なんでもねえ」

ほんの、一瞬。
動作を止めた俺を不審に思ったのか、松本がどうしたの?って目で問い掛けてきたから、慌てて笑って否定した。
否定、して。
もう一度。
軽く頭を2,3度振って、残響をすぐさま打ち消した。



「あんまり…駆け足で大人になろうとするなよ、日番谷」



…それは。
忠告にも似た、的確な戒め。最後の言葉。
正直、虚を衝かれた。
だから、と云うわけじゃないけれど。


「駆け足で大人になろうとすることが、そんなにイケナイことなんですか?」


嘲笑うように、問い返していた。
水を打ったように、一瞬にして静まり返る教室内。
暫しの沈黙。
交差する視線。
ざわ、と。再びざわめき始めた教室に、対峙した俺とオッサンと。
結局。
曖昧に笑うばかりのオッサンから、返事が返ることはなかったけれど…。



松本とのことを、あの担任に知られていたとは思わない。
けれど、恐らく。
何かしら予感めいたものはあったのだろう。
そうでなければ最後の最後で、あんな言葉を去り往く俺に投げ掛ける筈もない。

(けど、もう…遅い)


照れたように微笑みあって。
再び近付く、互いの くちびる。
やわらかな胸元に這わせた指先。
拙くうごめく指の動きに、零れる吐息。湿った肌。
交錯する熱。駆け上がる衝動。
互いが互いを得る為の儀式。

(…引き返せる筈もない)


この おんなを得た 今となっては。






end.


小学生日番谷とおバカちゃん女子高生な松本のパラレルコネタの続きの更に続きの、やっとオチです…orz
いろんな意味で期待を裏切るコネタですみません(笑)基本・青臭い話しか書けないヘタレ野郎なんで、これが管理人の限界でした;;おっと、「肩透かし喰らったー!」って苦情は受け付けませんよー(笑) 
あとは『微裏』とか言いつつやけに説教くさいのもご愛嬌ってことで、松本を前にイッパイイッパイな日番谷の様子とかガキんちょなりの必死さとかがちょっとでも伝わってたらいいなとか思います^^;
あーでも気がむいたらまたこの二人で何か書きたいなあ…(笑)小学生と女子高生って設定だけで一人萌えてる阿呆ですんません☆


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あきゅろす。
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