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14.


突然のことに、さすがに驚きはしたけれど。
正直なところその為だけに、およそひと月振りにこの部屋を訪れたのかと思って軽く凹みはしたのだけれど。
言われてみれば王様は、寝てるあたしに手を出すようなマネもしなければ、それこそ無理に起こすようなマネもしなかった。
ただ寄り添って、本を読んでいただけだった。
(それってつまり、気遣ってくれてたってことなのよねえ?)
(自分本位に抱くんじゃなくて、あたしの意思を尊重してくれたってことなのよねえ?)
況してやこのひと月の間、決してあたしを放置していたわけじゃなくって、ずっと傍らで寝てくれていた。
忙しい仕事の合間を縫って、あたしの元へと夜毎通ってくれていた。
きっと王宮に寝所を構えて休んだ方が、よっぽど身体は楽だし仕事の効率も上がるだろうに、王宮から少し離れた場所にある、この離宮まで毎晩通ってくれていたのだ。
ばかりか、今もこうしてあたしのことを気遣ってくれる。
決して無理強いするようなこともなく、あたしが嫌なら抱かない、と。
我慢すると言っているのだ、このひとは!


「う゛う゛…、おーさまああああああ!!」
「わっ!ど、どうしたお前!?」


ぶわりと決壊した涙腺。
滲む視界もそのままに、ぎゅうと痩躯に抱き着いたなら、ギョッと慄いた王様が、うろたえたようにおろおろとあたしの背中を抱き返す。
あやすかのように優しく髪を梳いてくれる。
ぎゅうとあたしを抱きとめてくれる。
それがまた嬉しくて、ますます以って涙は留まるところを知らない。
うーうーと、必死に堪えつつ感極まって、涙と共に溢れ出す言葉。
「おーさま、大好き!愛してますっ!!」
「んあ?珍しいな、お前がンなこと口にするなんて」
それに王様はほんのちょっとだけ驚いたように目を瞠り、けれどすぐさまにんまりと笑うと。
…ああ、俺もだ・と。
甘い言葉で以ってくちびるを塞ぐ。
ああ、やっぱり起きてるお前とくちづける方が気持ちがいい、と。
言外に、このひと月余り眠るあたしにくちづけていたことを仄めかすから、否応にも頬が熱を持つ。
くらくらとした酩酊に襲われる。
だから結局明け渡していた。
乞われるままにこの身を差し出し、交わることをあたし自ら願い出ていた。







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あきゅろす。
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