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12.


うわあ、昼に続き夜までも?!って、内心ちょっぴり焦りつつも、求められれば拒む理由も必要もない。
だから全然いいんだけど、それでもこの部屋に入ってきた時の疲弊しきった王様の様子を鑑みるに、今夜はゆっくり休んだ方がいいんじゃないの?とも、思う。
それに何より…きっと王宮では『神の娘』が王様の戻りを待っているんじゃないのかしらと思えば、今日二度目の逢瀬と久々の夜の渡りへの嬉しさよりも何よりも、後ろめたさだとかやり切れなさがどうにも勝ってその肩を、思わずトンと強く押し返していた。
突然肩を押し返されて、驚いたように瞠った瞳。
「…松、本?」
訝るように問い掛けられて、ハッと我に返ってあたしは、誤魔化すようににへらと笑う。
「っあ、あの…その、お疲れみたいですし、おーさま。今夜は早くお戻りになって休まれた方が…」
慌てて取り繕うように言い募れば、尚も顰められた眉間の皺。
「戻る…って、お前。どこにだ?」
「へ?」
「つーか、お前が俺に抱かれたくねえってんなら仕方ねえ。昼に無茶させた自覚もあるし、百歩譲って俺も大人しく諦めるが、戻って休め…ってのはどう云うこった?ここ以外のどこで俺に休めってんだよ、お前?!」
――極、至近距離。
ギロリと剣呑な目付きでねめつけられた挙句畳み掛けられて、咄嗟二の句が継げなくなる。
とゆーか、ますます以って意味がわからなくなる。
(てゆーか、アレよ。もしかしなくとも、全っ然話が噛み合ってない?)
王宮へ…『神の娘』の元へと戻った方がいいと諭したあたしにこのひとは、どこに戻れと言われているのかまるでわからないとばかりに憤った。
況してや、無理を強いて抱く気はないとも口にした。
(それも、百歩譲って…ですか!)
あまつさえ、あたしの部屋以外に休む場所など無いとも言い切った。
(ええ…っと、確かにあたしが離宮入りしてからこっち、夜はずっとあたしの寝所でお休みになられてましたけれども!)
でもそれってば、『神の娘』が現れるひと月前までの話じゃないの?
それ以降は今日までずっと、一度たりともあたしと閨を共になんてしてない筈でしょ?
そもそもあたしにこのひと月、王様と閨を共にした記憶はない。
だからずっと王様は、王宮で『神の娘』と一緒に過ごしてるんだと思ってた。
あの子の元で休んでいるんだと思ってたけど。
…だけど、違うの?
そうじゃないの?
これってあたしの勘違い??
それとも勝手な早とちり???
そう思って切り出していた。
「ええっと、…王様?」
「なんだ、松本」
ぶっすりとした仏頂面で返されて、ひっ!と慄くも気を取り直して顔を覗き込む。
まさかよねえ、と。
半信半疑に問い掛けた。


「あの、このひと月、夜はどちらでお休みに?」
「はァ?!ンなモンここに決まってんだろが!」
「…っっ!?」


その返答に、あたしが絶句したのは言うまでもない。








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