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15.


申し訳ないけど、こればっかりは納得いかない。意味がわからない。
そんなに想ってくれていたんだったら、その片鱗ぐらい窺わせててもいいんじゃないの?
会話のひとつも弾まないとかありえないでしょ!と思ったから。
やっぱりどうにも気になったから…。
「っで、でも若旦那!お見合いの席で、すっごい嫌そうでしたよね?!めちゃめちゃ不機嫌でしたよねっ!」
身を乗り出して問い質した。
否、それだけじゃない。
さっきだってあの子の前ではあんなに楽しげだったのに、あんなに普通に笑ってたのに、…それがどうだ。
あたしが現れた途端、笑顔は一転、ぶっすりとした仏頂面へと取って代わった。
冷たくあしらわれたではないか!
(これで五年もあたしを想ってたとか、どの口が言うか!?って感じじゃない?)
むしろあたしってば目の敵、あの子こそが本命だって、あたしが勘違いしたところで無理は無いと思うのだ。
そう当てこするように詰ってやれば、途端「そ、れは…」と、言葉を濁す。尻切れになる。
ああ、またか…と思う。
最終的に、そーゆーところに一抹の不安を抱いてしまうのだ。
…もしかしたら、やっぱり『勘違い』とかなんじゃない?
思い込みと憧れと…いつしかない交ぜになって執着になったってだけなんじゃない?
だからホントのホントは幼なじみのあの子のことが好きなんじゃないの?
仮に望まれるがままこの手を取って、お嫁に行っても結局は…勘違いに気付いた若旦那に三行半を突きつけられて、あっさり終わっちゃうんじゃないの?
なんて思ってしまうから、どうしたって躊躇が勝る。
家柄だとか年の差だとか、引け目が勝って臆病になってしまうのだ。
そんなあたしの戸惑いと、不安をどうやら察したらしい若旦那は、違う!!と慌てて弁明を口にした。








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あきゅろす。
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