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10.


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「だいたい、幾ら親が乗り気の縁談だからって、イヤならイヤでちゃんとご自分でお断りぐらいして下さいよ!そんな簡単に丸め込まれてどおおすんですかっ!」
「いやだからちょっと待て、丸め込まれる…って何の話だ!」
「うっさい!そもそも他に好いた女が居るんだったら、最初からお見合いなんてすんじゃないわよ!おかげでうちじゃお父っつあんもおっ母さんも、やれ玉の輿だってぬか喜びしちゃってほとほと困り果ててんですからね、あたし!帰ったら誤解だったって説明だってしなくちゃならないんですからね!!若旦那だってこんなところで油売ってる暇あるんだったら、さっさと家に帰ってあの桃って子と所帯を持てるように説得でもなんでもしてきたらいいでしょがああああ!!」
万が一にもあの子まで、あたしみたいに行き遅れちゃったら可哀想でしょが!!と叫んだあたしに、心から驚いたような顔をして。
若旦那がアホかと言った。のたまった。
酷く呆れたような声だった。
「…つか、何を勘違いしてんのか知らねえが、俺が惚れてんのは桃じゃねえ!縁談だって、俺が無理言って頼み込んだんだよ、ド阿呆!!」
挙句ぶち切れたように罵られて、驚くより先に思考が止まった。完全停止した。
いったい何を言われているのか、遠く理解が及ばなくなった。
(て、ゆーか…)
若旦那が惚れてるのって、あの子じゃないの?
あんた達ってば、相惚れの仲じゃなかったの!?
いやそれよりも、今回のこの縁談を持ち掛けたのって、…このひとなのおおおおおお!?
「えっ…嘘!だって確かうちをご贔屓にして下さってる京楽様が…」
「だから!頼んだんだよ、俺が、叔父貴に!あんたとの見合いを仲立ちしてくれ、ってな」
「うええええーーーっ?!」
なんで?
どうして??
と、またも困惑千万驚いたのも無理もない。
だって接点なんて何もない。
そもそも若旦那はあまり甘いものがお好きでないと聞いていたから、うちの店にだって立ち寄ったことなどなかった筈だ。
(うん、だって見覚えないもの、この顔にあたし)
だから当然あたしのことなど知る筈もないこのひとが、どおおして縁談相手にわざわざあたしを選んだってのよ?
(それでいて見合いの席でのあの愛想の無いぶっちょヅラって、いったい何ーーっ!!)
やっぱりあたし、担がれてる?…なんて、思わず怪訝が顔に出た。
そんな頭から疑って掛かるあたしに目敏く気付いたらしい若旦那が、渋々ながらも漸くこの縁談の真相を語るに至ったのはそれから程なくのことだった。








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