[携帯モード] [URL送信]
死ぬまでいなくならないで 2


何しろタイミング悪しく雛森の復帰と、三・五・九番隊への新隊長任命時期が重なったこともあり、特に五番隊に付いては不安と懸念が高まっていた時でもあったから。
(だからって、よもやたいちょを今更五番隊へと異動させるわけにもいかないものねえ?)
(隊長は、やっぱり『十』を背負うのが一番似合っているものねえ?)
嘗ては確かにあのひとが『十番隊隊首』の名を担うことに異を唱える隊員達も少なからず存在した。
尤もそれは、志波一心が護廷十三隊十番隊隊長であった頃を良く知る古参の隊員達が殆どだったけれども…。
だからその頃、ぎくしゃくとするたいちょと隊員達の仲を取り持つ為に奔走したのはあたしだったし、この十番隊と隊員達を主に纏め上げていたのも確かにあたしだったのだけど。
それも今は昔の話だ。
今居るうちの隊員達は、皆揃ってたいちょに傾倒しており、一隊を纏め上げる隊首として『日番谷冬獅郎』を敬愛している。崇拝している。
ゆえに、今となってはあたしは単に、十番隊に於ける『ムードメイカー』的な役割を担う存在でしかない。
居れば確かに場は華やぐ。
たいちょとあたしの漫才染みたやり取りに、隊員達もきっと和みもするのだろう。
けれどそれはあたしでなくとも変わらない。
あのひとのことを良く知る雛森だって構わないはずだ。
ならばあたしひとりがこの十番隊から居なくなったところで、然程影響があるとも思えない。
むしろ仕事はしない、脱走はする、常日頃からたいちょを怒らせてばかりの『サボり魔』のレッテルを貼られたあたしなんぞよりも、鬼道の達人と呼ばれて事務処理だってそつなくこなす、勤勉この上ない雛森へと上官が代わることで、隊全体に良い影響を及ぼすんじゃないかとさえ思われる。
だからきっと、それが正しい。
四方八方丸く収まる、それが最善の方法に違いない。
――けれど、きっと…恐らくは。
そんなことにはならないだろうな、と。
胸中ひっそり思ってもいる。予感している。
きっとあのひとは、あたしを他所へとやることなんて、考えも及ばなければ迷うようなこともない。
誰かに進言されたところで、選択肢にすら上らせないないだろうとの半ば確信を得て今日もまた、あたしは夜の街へとひとり繰り出す。
待ち合わせた居酒屋で、気の置けない友人達と酒を酌み交わす。
バカみたいにはしゃいでは、ハメを外して笑って歌って大騒ぎをして、楽しいばかりの時間を過ごす。
――あのひとが迎えに来るまでの、瞬きみたいなその瞬間を。







[*前へ][次へ#]

3/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!