悲願花 2
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結局その後の『行為』そのものは、酷く野蛮で荒々しくて。
思い掛けない痛みを伴いもしたのだけれど。
触れる手のひらもくちびるも、あたしへと向けられる眼差しまでも。
限りなくやさしかった、…ように思う。
だから気付けばあたしの方こそが腕を伸ばして、触れられることを望んでいた。
きっとあの瞬間に恋落ちていた。
このひとで良かったと、心からおもった。
…だからきっと、あんな『夢』を見てしまったのだ。
愛している、と。
逃がさねえよ、と。
夢うつつの中、囁く小さなあのひとの声。
――ずっと俺の傍に居ろ。
懇願にも似たその声に、…いいの?と。
思わず返した先。
一瞬驚いたようにあのひとが、大きく目を瞠る顔が目に飛び込んで来たような気がして。
「お傍に置いて。離さないで」
(あたしも、あなたのことが…好き)
応えるように、微かに声に出して伝えたのちに。
再び視界に靄が掛かった。
徐々に意識が遠退いた気がした。
再び深い眠りに落ちてしまったあたしを前に、その時ひとり起きていたあのひとが。
寝入るあたしを見下ろしながら、口角を歪め、至極愉快気に妖艶なまでに微笑んでいたことを、あたしは知らない。知る由もない。
end.
悪足掻きのようですが、松本が日番谷に囲われた夜の『始まり』ネタをふと思い付いたので、ガッと書いてみた次第。
江戸パロはやっぱり書いてて楽しいなあ、バーッと打てるなあとしみじみ思ったり(笑)
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