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6.



敷布に広がる、波打つような長い髪。
四肢も気だるく意識を失い、横たわる女を見下ろしながら、誰にとも無くぼつりと呟く。

――よもや逃がして貰えるとでも思っていたんじゃねえだろな?

口にしたのは二度目だった。
だが恐らく、一度目のそれはこの女の耳まで届いてなんていなかった筈だ。
そうでなければあれほどまでに、縋るような目で俺の背を、抱き返したりもしなかっただろう。
ああも何度も確かめるように俺へとくちづけを乞うようなこともしなかった筈だ。
何がそうまでこの女を、執拗に追い立てたのかはわからない。
――否、もしや既に女の耳まで『噂』が及んでいるゆえなのかもしれない、と。
ふと思案して視線を逸らす。
事切れたように眠る女の白い美貌へと手を伸ばす。
やわらかな肌と、温かな呼気。
嘗て硬く強張るばかりであった女の身体は、今やすっかり俺へと馴染み、良くも悪くもくちづけひとつ――指先一本で容易く陥落するまでになった。
およそ三年に亘り続けられた、情交の成果を思えば嬉しくもある。
それが例え、金で買っただけの『情交』だったとしても。







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