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2.

「そろそろ女が欲しいと思って、誘われるがままに岡場所なんぞに足を運んでもみたんだが、どうにも興を惹かれる女がいねえ。そもそもテメエの情人(いろ)が俺の居ない間、別の男と乳繰り合ってるっつーことからしてイケ好かねえ。…だったらいっそ、テメエの自由になる女をひとり囲っちまった方が手っ取り早いんじゃねえかと思ってな」


そう言って。
湯呑みを片手に「く」と笑ったあのひとは。
その頃はまだ本当に、見るからに子どもの容貌でしかなくて。
正直その申し出を真に受けていいものか、一瞬狼狽もしたのだけれど。
「伊勢崎町に亡くなった俺のじいさんが昔女囲ってた時の家があるんだが、そこの鍵を貰っててな。あんたはそこに住めばいい。無論、夜は俺が通うが、昼は好きにしてていい。…ああ、好きにしてていいっつッても男連れ込むような真似をされちゃあ困るが、例えば家に帰っておっ母さんと弟の世話をしようが働きに出ようが好きにすればいいってこった。それ相応に金は払うし、自由もやる。あんたにとってもそう悪い話じゃないと思うんだが」
…どうする?と。
念押すように問い掛けられて、腹を括った。
若旦那の言う通り、確かに悪い話じゃなかったし、何より迷う余地などなかったから…。
だから縋るようにその手を取った。
まだ少年と呼ぶに相応しいあのひとの手を。







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あきゅろす。
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