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生まれかわりの愛をこめて 3


「ただいま」
辿り着いた先は、隊舎の自室で。
声をかけた途端すぱあんと、勢いよく襖が音を立てて開け放たれる。
「おかえりなさい、たあいちょ!」
満面に笑みを浮かべて松本が、俺へと向けて飛びついてくる。
おかえりなさいと繰り返し、ぎゅうと俺を抱き締める。
それを苦笑で以って受け留めて、せっかくの土産が潰れちまうぞと嗜めたなら、笑顔は更にパアッと華やぐ。
「お土産ですかあ!」
「おう。前にお前が食いてえっつッた、限定品の団子と羊羹買ってきた」
「っきゃあああああ!!」
手にした袋を「ほれ」と渡してやれば、途端耳を劈く歓喜の嬌声を上げる。
キラッキラに目を輝かす。
「たいちょ、憶えてて下さったんですねえ」
「当たり前だ。そう簡単にゃあ忘れねえよ」
改めて。
向き直り両手を広げれば、大輪の花が綻ぶように松本がわらう。
わらう。
わらう。
今にも泣き出しそうに、俺へとわらう。
この腕に収まる。
頬擦りをする。
それから、互いゆっくりとくちびるを寄せた。



*
*


永い永い眠りから松本が目覚めて、――ひと月と十日。
療養とリハビリ、数度に亘る精密検査が繰り返されたのち、卯ノ花から十番隊舎へと戻る許可が出されたのは、まだ一昨日の夜のことだった。
「今日は一日何してた?」
「ええっと、午前の間はずっと部屋でボーっとしてました。それからおうどんを茹でて食べて、ちょっとだけ部屋を片付けて」
「…それで?」
「まだちょっと…頭と身体が上手く繋がってないみたいに疲れちゃったんでひと休みして、それからご飯の用意をしてました」
今夜は豆乳鍋ですよ、って。
笑った松本に微笑みを返す。
今改めて、この喜びを言葉にする。


「おかえり、松本」
「…ただいま、たいちょ」
「もう、二度と…。俺を置いてどこにも行くんじゃねえぞ」


以前より、ほんの少しだけ近付いた目線。
逞しくなったつもりのこの腕で。
失われていた十数年の歳月を取り戻すかのように、もう一度、強く松本を抱き締めた。






end.


仕事を終えて隊舎を出て、いろんな人たちに声掛けられながら、ひとり人混みをすり抜けてゆく日番谷の『絵』がふと脳裏に浮かんだので、まんま形にしてみた次第。
最初松本は単に非番なつもりだったのに、何がどうしてこうなったのかはよくわかりません、すみません☆
あまり深く突っ込まず、サラッと読み流してもらえたら嬉しいです(汗)


お題:まよい庭火

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