[携帯モード] [URL送信]
続・おうじさまのたまご 2


何しろあたしの家と日番谷くんの家は隣り同士で、幼なじみなのだ。
だから偶然にも目にしてしまった。
コンビニからの帰り道、通りがかった日番谷くんの家の前。
玄関先で乱菊さんを抱き寄せている日番谷くんと偶然にも目が合った。
(てゆーか、こんなところで何してんのよっ!)
驚きの余り声を失くしたあたしに向けて、眉を顰めた日番谷くんは。
乱菊さんの細い腰へと片腕を廻したままに、もう片方の手をそっとはずすとそのまま人差し指を静かに自身のくちびるに当てて、黙れとばかりに命じたのだ。あたしへと。
おかげで、咄嗟に声を出すには至らなかった。
恐らく乱菊さんは目を閉じているかしてるのだろう。
背後のあたしに気付いた様子は微塵もない。
…うん、よかった。それはよかった。
けれどホッとする間もないままに、今度は『しっし』と犬でも追い払うように「さっさと行け」とジェスチャーされた。日番谷くんに。
これにはさすがにムッとしたのだけれど、結局あたしは脱兎の如くその場を駆け出していた。
それも、真っ赤に染め上げた顔で以って。
(だだだって日番谷くん、あたしが見てる目の前で、乱菊さんに路チューとか…っ!!)
うわ、もお!絶対アレッて嫌がらせ?!とも思ったけれど、…多分違う。
だって乱菊さんにキスする時の日番谷くん、すっごいやさしい顔して笑ってたもの。
だから、ああ…きっと日番谷くんもすっごいすっごい好きなんだろうな、乱菊さんを。
――四つも年上、四つも年下。
なんだけど、すっごく大事で大好きで、きっと大切にしてるんだろうなと思ったら、なんだかちょっぴり羨ましいな。
いいなと思った。
いっこ年下の弟みたいなあの日番谷くんが、何だかいきなり『大人』みたいに見えたのだ。
(でもこれってぜーんぶ、乱菊さんといるから、…だよねえ?)
そう考えると、恋ってすごい。
偉大だなあって、しみじみおもう。








[*前へ][次へ#]

3/4ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!