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stray sheep 3



見た目が派手なら、顔も派手。
ギャル系のノリかと思えばゲームオタクで、ファミ通なんぞを愛読していて。
暇さえあればDSやらPSPやらを弄っている。
松本の見た目と、見た目から生まれるイメージで以って付き合っただけの男にすれば、それは想定の範囲外に違いない。
よっぽどのゲーム好きでなければ白けちまうのが関の山だろう。
「映画とか見ないし興味も薄いし、買い物するなら仲いい女友達と行きたいってタイプだし、げーのーじんとかにも興味無いしで話ぜんぜん合わないし。可愛いカッコすんのは好きなんだけど、それってあくまで自分のためであって、アンタのためじゃないってゆーのに勘違いするようなヤツばっかだし、大抵どいつもひとのこと、えっちぃ目ですぐ見てくるし。なーんかね、そーゆーヤツばっかりでさすがにイヤんなった」
「ああ、だから俺?」
「そ。よくわかんない男とテキトーに付き合うよりか、アンタといる方が楽しいし。…ってことで、青田買い?」
「なんじゃ、そりゃ」
呆れる俺を尻目にくすくすと笑う松本は、また少しだけ膝を進める。
俺との距離が近くなる。
「つか、そんならいっそ、ゲーマーな男でも紹介してもらえ」
「あー…、中にはそーゆーひともいたんだけどねえ、アンタと遊ぶ方が面白いんだもん。つまんないからすぐに別れちゃった」
だからあたしと付き合おう!って。
悪びれた素振りも見せずに声高々に告げられて、最早返す言葉もありゃしない。
そうしている間にまた距離が縮まる。
俺はベッドに寄りかかっていて、それ以上後ずさることも出来ないままに、追い詰められてゆくばかり。
松本の顔は、次第弛んでゆくばかり。
「あたし、いろんな男の子と付き合ったり遊んだりしてきたけど、こうやってアンタとゲームしたり部屋でごろごろしてる時が一番好きだし楽しいの。それにね、やっと気付いたの。だからアンタが嫌じゃないんなら、あたしのこと…カノジョにしてよ」
極・至近距離で見据えた松本の青い瞳には、戸惑う俺が映り込む。
ならば今俺の瞳には、バカみてえに真剣な眼差しで、小学生のガキ相手に真面目に口説いてるこいつの顔がはっきりと映り込んでいるのだろう。
そう考えると、何だかちょっぴり笑えてくる。
「あ、なによう。何ひとの顔見て笑ってんのよう!」
むうと剥れた女の百面相に、込み上げる苦笑。
「ま、いいけどな」
「…へ?」
「だから俺と付き合うんだろ?」
――ガキだけど、と。
にんまり笑って口にしたなら、驚きに見開くまんまるの瞳と間抜け面。
おかげで納まるどころかますます笑いはこみ上げてくる。
「う、わ…マジで!?」
「ッハ!テメエから先に告っといてそれかよ?」
「いやん、嬉しい!」
キラッキラの笑顔を浮かべて、ぎゅうと抱き着いてくる松本のからだを受け留めて。
「但し、返品不可だぞ」
と、釘を刺す。
「えー!なにそれ、するわけないでしょ、返品なんてそんなもったいないこと!アンタのいいとこもやなとこも、嫌ってぐらいわかった上でアンタがいいって言ってんだからね、あたしは。だからこのままあたしがお買い上げするっ!」
あははと笑って軽く往なした松本は、改めてくふりと笑みを浮かべた後。
徐に目を閉じ俺との距離を更に縮めた。
そうしてゆっくり押し当てられたくちびるは、恐ろしくやわらかで気持ちよかった。
「んふふ。初ちゅー、ごちそうさまっ!」
してやったりとばかりににんまり笑った松本に、顔にこそ出さずにこみ上げる苦笑。

(そいつァこっちの台詞だ、バカ)




――よもやこうも容易く手に入るとは思わなかった。








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