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15.


「だ…だって、初めての夜に…チッ!て。思いっきり舌打ちされるし、ものすっごく嫌そうな顔までされたし、そもそもこれまで一度だって睦言ひとつ掛けてもらったこともないんですよ、あたし!そんなの、どう考えても嫌われてるとしか思えないじゃないですか!あー、夜の渡りも嫌々なんだな、娶った以上仕方なく抱いてるだけなんだろうな・って、思って当然じゃないですか!おまけに事が済めば背中向けてさっさと寝ちゃうし、朝も早々寝台から居なくなってるし、そんな素っ気無い態度ばっかり取られてたら、いい加減あたしだって傷付くに決まってるじゃあないですかあああ!!」

ああ、マズイなと思った時には遅かった。
気付けばすっかり感情が昂っていて、全てぶち撒け終える頃には、眼前は涙で滲んでいた。
うわああああん!!と。
子ども染みた泣き声を上げるに至っていたのだった。
みっともないと思いながらも、おいおいと泣き声を上げる。涙を零す。
思い起こすにあんまり過ぎるあのひとの態度に、どうやらあたしは思った以上にダメージを受けていたようだった。
(幾ら政略結婚だからとは云え、この扱いは、幾らなんでもあんまり惨め過ぎる、あたし!)
そんな思いが溢れる涙に拍車を掛けたに違いない。
涙は留まるところを知らない。
それを呆然と眺めていたあのひとは、いやちょっと待てとやや青ざめた表情で、年甲斐も無く泣きじゃくるあたしをとうとうその腕の中へと抱き締めたのだ。
「つか、誤解だ!あ…ありゃあ別に嫌がってたわけじゃあ…」
「っな!う…嘘ばっかり!めちゃめちゃ機嫌悪そうでしたよ、陛下!それに舌打ちだってしてましたー!」
「や、だからそれは…」
「言い訳なんていりません!てゆーか、離して下さい、今すぐに!!」
ぐいと身体を押しのけようとしたところで、逆に抱き寄せる腕に力が篭められる。
痛いぐらいに抱き潰される。
「っい、いった…!へーか!」
「そうじゃねえ。つーか、ちったあ大人しく聞けよ、話を!」
低い声。
顔は見えない。
窺うことすら出来やしない。
それでも抱き寄せられた先、陛下の胸から聞こえる心臓の音は、異様なまでの速さで脈打っている。







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