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14.


「え、ええっと…陛下?今のはいったいどう云う…」
「どう云うもクソもあるか!まんま、言った通りの意味だ、アホ!」
ア…アホ!?
アホとか言っちゃうし!!
「だってだって、それってまるで、あたしのことが…その、好きだ・って。言ってるみたいじゃないですかあ!」
「だ…から、そうだっつッてんじゃねえか!!てか、なんっでこの流れでわっかんねんだよ、お前!!」
信じらんねえ!と、髪をぐしゃぐしゃに掻き毟る陛下を前に愕然とする。
頭の中であのひとの言葉を、何度も何度も反芻をする。
「…う、そぉ」
「嘘なわけあるか!つか、ホンット腹立つな、お前のそーゆーとこ!!だいたい何だよ、いきなり人に側妃娶れとか勧めてみたり、かと思えば俺に女がいるだとかくだらねえ『噂』鵜呑みにしてみたり、自分のこと和平の為のただの人質だとか言い出したり!!いったい何時俺がお前を人質だっつッた!お前以外の女を妻にしてえとか言ったよ!?」
ンなこた俺ァ、ひとっ言も口にしてねえぞ!!と思いがけずに詰め寄られて、はてそうだったかしら?と頭を巡らす。
いやいや、そんなバカな。
だって、「幾ら好きで嫁いだ男相手じゃねえにしたって、もうちょっとぐらい愛想良く出来ねえのか」とか、酷いことばっかり言ってなかった?
人質なんだから当然だろう、何をされても黙って耐えろ、みたいな態度で接してなかった?
…だけどよくよく思い返してみても、言葉ではっきり「お前はただの人質だ」とか「何をされても文句は言うな」とか、「側妃を迎える」だとか言われたような記憶はない。
どころか、あたしの方だ。
今、陛下も言ってたけれど、「側妃を娶ったらどうか?」と打診したのは確かにあたしの方だ。
てゆーか、好きで嫁いだ男じゃねえ・とか言わせてるのってあたしの方だ。
もっと愛想良く出来ないのかとか言われてるのって、むしろあたしの方なんじゃないの?
そう思い返しては、ザッと青ざめる。
(あ…あれえ??)
「っそ、それは…確かに言ってなかったですけども…」
「…けど、何だ?」
徐々に小さくなってゆく、あたしの言葉尻を捕らえて陛下が尚も続きを促す。
それにあたしは「うぐ」と言葉を詰まらせる。
(言われてない。言われてみれば、確かにそれらしいことはひと言だって言われてなんてないんだけども…)
果たしてこのひと相手にそこまで本音を暴露してもいいものなのか、どうなのか。
ほんの刹那、躊躇うように逡巡をして。
けれど結局誤魔化すことは赦されなかった。
否、極至近距離からの無言の圧力に堪えかねて、とうとうあたしは心の奥底に秘めていた、積もり積もった疑念と恨み言とを全てぶち撒けるに至ったのだ。







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あきゅろす。
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