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13.


(だって、初夜で舌打ちよ、舌打ち!しかも、すっごい嫌そうな顔とかしてたし、このひと!)
さすがにアレは相当に堪える。
思い起こすに、今以って凹む。
だがどうやら思いっきり顔に出てしまっていたらしい。
目敏く見咎めた皇帝陛下は、不機嫌も露に眉を顰めると。
「…他に女がいるって誤解なら解けた筈、だよな?なのに何でまだンな冴えねえツラしてんだ、お前?」
と、あたしの顔を遠慮会釈無く覗き込む。
尚も暴き立てようとばかりに、翡翠の瞳があたしを射抜く。
「そ、れは…」
「何だ?何がまだ言い足りねえ。思うところがあるんなら、ちゃんと全部俺に言え。何も俺ァ、お前にンな顔させたいわけじゃねえ」
思わず逃げるように逸らしてしまった瞳。
真摯な言葉とその眼差しに、…そんな筈もないのに・と。
わかっていながら、また『愛されている』ような錯覚を受ける。
ツキンと鈍く胸が痛む。
「…ダメ、ですよ陛下。そんな風に誰にでも優しい言葉なんて掛けたら、うっかり勘違いしちゃいます」
「は?」
「っそ、そういう優しい言葉は、陛下が本当に…心から妻にと望まれる姫君にだけ掛けてあげて下さい。所詮和平の為の人質でしかない、好きでも何でもないような女相手に、むやみやたらに掛けていい言葉じゃないです」
痛む胸を押し隠すように、諭すように伝えたなら。
心底驚いたように一瞬大きく瞠った翡翠の瞳。
けれどすぐに眇められ、怒気も露にねめつけられる。
「俺が心から妻にと望む女だと…?テメエ、マジで言ってんのか、それ」
だから今お前にしてんじゃねえか、と。
人質ってなんだ、と。
俺ァ何も、好きでも何でもない女相手に愛想振りまいてるつもりはねえ!と。
語気も荒く詰られ、息を呑む。







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あきゅろす。
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