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11.


「嘘おっ!!」
「嘘じゃねえ、ホントの話だ」
「なに言ってんです、この国の宰相って言ったらあれでしょ、京楽様でしょ!彼女はその補佐でしょう!!」
何でそんなすぐにバレる嘘を吐くのかしらと、詰るように責め立てたなら、何とも極まり悪そうな顔をして。
「いや、それはそうなんだが…。京楽のヤツはどうにも仕事にムラがありすぎてなあ。ぶっちゃけ伊勢の方が使えるってことがわかって以来、主従が若干逆転してんだよ、あそこの夫婦は」
どうにもこうにも恥じ入るように言ったものだから、それ以上追究する気も失せてしまった。
…て、ゆーか。
「っふ、夫婦!?」
「おー。つっても京楽の女癖の悪さが災いして、まだ籍は入れてねえし表沙汰にもなってねえけどな。結構前から事実婚状態ではあるな。だから当然、部屋ン中には京楽もいた」
「な…、な…」
なんてことおおおおおお!!!!
夫婦?!
夫婦だったの、あのふたり!!
「…よ、よもや謀ってませんよね、あたしのこと?」
「してねえよ。つか言っとくが、ああ見えて伊勢はなかなかのえげつねえ策士だからな。軍事的な策略に於いてはある意味京楽よりも重宝してる」
ニィと嗤ったその顔から見て取れるのは、どう見積もっても恋人を想う甘い表情とは言い難い。
むしろ全幅の信頼を寄せる、気の置けない部下へと向けるそれである。
(じゃあじゃあやっぱり、夜毎部屋に渡っていたって云うアレは、恋人同士の逢瀬でも何でもなかったってこと?!)
勘違い?
ぜーんぶあたしの勘違いだったってことですか!そうですか!!
うわあ、何たる思い込み!
ここはひとつ、穴でも掘って埋まりたい。
いっそ地中深く潜り込んでしまいたいと思ったのも、無理からぬことだとおもう。
羞恥に項垂れるあたし。
溜息混じりの陛下、と。
えも言われぬ絶賛微妙な沈黙の中。
対峙している最中に、つと伸ばされた腕。
陛下の手のひらがあたしの髪をひと房掬う。
くんと軽く引き寄せられる。
…陛下?と。
声を出す前に、ふわりと塞がれてしまったくちびる。
触れるだけのくちづけののち、再び徐に問い掛けられた。




「俺が嫌いか?」








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あきゅろす。
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