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2.


三つ年下でまだ十六と年若いけれど、氷雪系最強の霊圧を操るがゆえ、この大国を統べるばかりか戦闘に於いても先陣を切って戦うと云う、少年皇帝。
正直実際お顔を見るまでは、どんな恐ろしいひとかと思って不安だったし、嫁ぐのなんてもっての外。
本当に嫌で嫌で仕方なかったのだけれど。
銀糸に緑眼、顔立ちはコドモながらに恐ろしいまでに整っていて、初めて顔を合わせた時は、正直ストライクゾーンのど真ん中過ぎて鳥肌が立った。
――要はひと目惚れだったのだ。
だから内心、よっしゃああああ!!!と。
澄ました顔の内、ガッツポーズですっごくすっごく喜んではいたのだけれど。
どうやら好意を抱いたのは、あたしの方だけだったみたい。
何を話しかけても無反応。
むしろ迷惑そうに眉を顰める。
三白眼でねめつけてくる。
それに、初夜の時だって…。
何というか、ほんっとーーーに嫌そうだった。
そのせいなのか、交わりの最中、何度も溜息吐かれたり舌打ちされたり。
ただでさえこっちは痛いわ恐いわで脅えていたと云うのに、そのあんまりな反応に打ちのめされた。
ショックと羞恥、ハンパない痛みで本気で泣きたくなった。
てゆーか、めちゃくちゃ凹みましたとも!!
だけど理由はすぐにわかった。
どうやら彼には、既に意中の女性がいたらしいのだ。
何でもあたしとの結婚が決まるその前までは、足繁くその彼女の元へと通っていたらしい。
(うわあ!)
それじゃああたしが疎ましいのも無理からぬことよねと思って打ちひしがれた。
それじゃあそもそも好意なんてもの抱いてもらえる筈もなかろうと、漸く合点が行ったのだった。
――あたしとは対照的な、黒い髪に黒い瞳の、小柄な身体。華奢なシルエット。
そんな噂を耳にして、なるほどそれじゃあ溜息だって出る筈だ。
そーゆー清楚なタイプがお好みじゃあ、そりゃあ舌打ちのひとつも出るわけですなと合点が行った。
うん、納得行った!理解した!!
だからそれ以来、陛下と仲良くなろうなんて思うことは止めにして、極力顔を合わせないよう努めることにした。
話しかけるのも止めてしまった。
夜の渡りも本意じゃないとわかっていたから、いっそ側妃でも娶ってはどうかと泣く泣く打診したりもした。
そんなに未練を残しているなら、いっそその意中のカノジョとやらを側妃に娶って、寵愛したらいいじゃないと思ったのだ。
(だって今のあたしに出来ることなんて、それぐらいだと思ったから)
だけどあのひとにしてみれば、無用な気遣い――余計なお世話だったんだろう。
ふざけるな、と。
お前如きに指図される謂れはねえ、と。
ものすっごおおおおく、怒らせましたとも。…あい。
以来、ますます溝は深まるばかりで、夜の渡りもヤケッぱちですか?と問いたくなるぐらい、いっそ頻繁になっていて。
正直な話、精神的にも肉体的にも、とってもツライ。
せめてそこに好意のカケラぐらいでもあるんだったらまだ報われるものの、ほんっっとーーにその為だけに来てるんだもの、あのひとってば!
人質なんだから当然だろう、何をされても黙って耐えろ、みたいな態度が丸わかりで、気付くと涙が零れていることもしばしばだった。
「こんなことなら王族になんて生まれてくるんじゃなかったな…」
そしたらこの国に嫁ぐこともなかったのに。
このひとに、こうも嫌われることもなかったのに。
そう思ってガックリ項垂れていたのだけれど、意外にも周囲の反応は全くの真逆。
あたしの認識と大きく乖離していることを、ある日突然思い知らされるに至ったのだった。







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あきゅろす。
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