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4.


結局俺と女は連れ立つように両国橋を西へと戻り、そのまま広小路近くの蕎麦屋に入る。
盛り蕎麦を二人前、注文する。
ちょうど夕時だからだろうか、店は幾分混み始めていて、さほど広いとは云えない店内はすぐにも客でいっぱいになった。
「ごめんね、お腹空いてたの」
運ばれてきた蕎麦を笑って啜る女を向かいに、俺も箸を取り蕎麦に手を付ける。
がやがやと賑やかな店の奥、暫くの間ふたり黙って蕎麦を啜った。
だから漸く女が話を切り出したのは、半分ほど蕎麦に手を付けた後のことだった。




「何かあった?」

視線は未だ蕎麦へと向けられたまま、俺を見ることもなく問いかけられて。
「…何かあったのはアンタも同じだろ」
極まり悪く言い返す。
けれど女は然して気にも留めない様子で、そおねえ…とまた笑った。
少し翳りのあるその笑みに、自分と似通った『何か』を見て取ったのは、果たして偶然だったのだろうか。
気付けば、ぽつりぽつりと女に向けて打ち明けていた。
どうせ行きずりの女なのだからと、洗いざらいをぶち撒けていた。







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あきゅろす。
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