殺戮は夜鳴く獣の慟哭 3
震える睫毛。
ゆるりと開く、薄い瞼。
覗く青い瞳に一瞬、息を呑む。
「…たい、ちょ?」
およそ十数年ぶりに耳にする、甘くあまえた女の声に、痛いぐらいに胸が締め付けられた。
気付けばこの腕に抱き寄せていた。
「くる…苦しいですってば、たいちょっ」
「うるせえ、文句言うんじゃねえ!」
じたじたと身じろぐ身体を、懇親の力で以って抱き締める。
それこそ骨が軋むほどの強い力で。
その存在を。
生きてる証を確かめる。
*
*
「なんてゆーか、十数年もあたし、眠ってたなんて嘘みたいな話ですよねえ」
「ホントにな、出来ることなら嘘であって欲しかったぜ。待ってた俺の身にもなってみろ」
チッと舌打ちをした俺にうふふと笑い、そっと膝詰めに近付いて。
松本のくちびるが掠めるように、俺のくちびるへと押し当てられる。
「寂しかったです?」
「当たり前だ」
ムッと言下に言い返したら、ごめんなさいと松本が、やけに楽しげに笑いながら、俺へとぎゅうと抱き着いてくる。
受け留めて、胡坐をかいた膝の上へと抱き上げる。
「十数年、ちょーっと見ない間におっきくなっちゃって…。あたしもちょっぴり寂しいです」
「たかが二十センチぐれえしか育ってねえぞ」
「たかがじゃないです、あたしにとっては一大事ですー」
こんなことなら十数年ものんびり寝こけてるんじゃなかった、と。
ぷうと頬を膨らめた女を腕に抱き、何度だってその存在を確かめる。
生きている。
動いている。
笑っている。
むくれる。
拗ねる。
ぶーたれる。
俺へと甘えてワガママを言う。
その度ごとに、確かめるように見つめなおしては、くちびるを重ねる。
離れていた十数年の隔たりを、まるでこの手に取り戻すかの如く抱き締める。
「二度と俺の前から消えたりするな」
「消えたりなんてしませんよ、絶対」
――ずっとたいちょのお傍にいます。
繰り返し紡がれる誓いの言葉に目を細め、尚も離さぬようにと抱き締めた。
end.
思いつくままを殴り書き。書いた本人も何がなにやらよくわかりません(え?)
ひたすら松本を追い求める日番谷が書きたかっただけなんです。松本以外いらねえ的な、ちょっと気が触れかけてる日番谷とか、ね…。
設定はかなり曖昧。思いつきのちょー適当です。突っ込みどころも満載です。充分わかっているので読み流し程度にそっと見逃してもらえたら嬉しいです(涙)
お題:sein様
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