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彼女はデリケート 3


「なあ、それより聞けって。マジで誤解なんだよ、せんせー!」
捲くし立てる日番谷は、見るからに息を切らしていて。
相当に焦っているようでもあった。
けれどあたしは顔を上げない。
話を聞こうとも思わない。
「誤解でもなんでもいいから、先ずはその手を離してちょうだい」
こんなところを万が一にも、誰かに見られでもしたら困るんだけど、と。
低く詰るも日番谷は、ぜってえ嫌だと一歩も引かない。
ばかりか、無理矢理のように尚も距離を縮めるものだから、余りのことにあたしの方こそ慄いてしまう。
「っちょ!やめてよ、バカッ!」
「話、聞いてくんねえならこのままここで押し倒すけど?」
…って、アンタ。
どんな脅しよ!!
「話も何も、どうせアレでしょ?気の迷いだとかそんなとこでしょ?ま、アンタはちょっと年上なぐらいの方が好きみたいだし、…いいんじゃないの?このままあの子に乗り換えたって」
年上ったって、今はまだ学生同士なんだし、あたしと違ってリスクもないしでお似合いよ?と。
殊更突き放すように口にしたなら、一瞬痛みを堪えるような顔をして。
…ふざけんな、って。
低く唸って、腕をねじり上げられた。
更には引きずられるようにそのまま来た道を戻るハメになる。
痛いじゃない、と文句を言おうが聞く耳なしに腕を引かれる。
無理矢理のように保健室へと連れ戻されて、後ろ手にガチャリと鍵を掛けられる。
どうやら彼女は既に立ち去った後らしい。
人気のなさを確かめてから、胸中ホッと安堵する。
その間にも明かりは落とされ、勢い良くカーテンが引かれる。
そうして改めて向き直ったかと思ったら、強引なまでにくちびるを塞がれ、壁に身体を縫い付けられて、抗うことも出来なくなった。
「…言っとくが、俺からアイツに手なんか出してねえからな」
ちゃんとわかってんだろ、と。
念を押されて、渋々頷く。
それにホッと安堵を見せた日番谷は、確かにあの時ベッドの上で。
「やめろ!」
「退けって!!」
と、あの子相手に憤っていた。
むしろ抗っていたのだから。
況してや迫っていたのは日番谷ではなく、明らかに彼女の方だった。
その際に、「ね、やり直そうよ、あたし達」と言っていたことも耳にしている。
だから日番谷の言い分は概ね正しい。
あたしが勝手に八つ当たっているだけなのだ。







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あきゅろす。
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