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SEVEN DAYS WAR 1

※「王様と私」の王様サイドにてパラレルに付き要注意。



今日一日の執務を終えて、くたくたになって帰り着いた部屋の中、寝台の上。
くうくうと寝息を立てて熟睡している女の顔に、ふと頬が弛む。相好を崩す。
「ただいま、松本」
そっと耳元にくちびるを寄せて囁いたところで、よほど深く寝入っているのか、女が目覚める気配は無い。
まぶたひとつ、ピクリともしない。
だがそれも致し方のないことだろう。
何しろ時刻はとうに夜半を回って余りある上に、ここ最近の松本は、日中を王妃教育とやらに忙殺されているらしいのだ。
例え零落した貴族の家に生まれたとは云え一応貴族の端くれなのだから、多少なりとも行儀作法や一般知識、教養の類は身についているかと思いきや、一国の王妃としての資質に遠く及ばないにも甚だしい、と。
どうやら宰相達に余程キツイ厭味を言われたらしい。
だが、王族としての知識教養に欠けるのは、当然のこと。
これから少しずつでも憶えていけば良いのだし、そもそも行儀作法や立ち振る舞いに限って言えば、松本のそれは充分過ぎるとも云えた。
凛とした佇まいと相俟って、流れるような金色の髪と青い目を持つ松本の容姿は、否応にもひとの目を惹く。惹き付ける。
だがこの女の最大の武器は、浮かべるその笑顔にあった。
屈託の無いその微笑みは、正に聖母もかくや。
時に松本を陥れんとする宰相達をも魅入らせたし、無論…この俺だって例外じゃない。
――そう。
気付けば魅入られている。見惚れている。
鮮やかな髪に。その微笑みに。

「あたしなんて、おーさまがホントに大事なひとを見つけるまでの、所詮『お飾りの王妃』でしかありませんけれど」

事あるごとにそう口にして、遠慮ばかりしているような女だけれど。
それを俺も、いちいち否定したりはしないけれど。
(お飾りの王妃なんぞである筈もない)
正妃に娶るようにと命じたのは、確かに親父なのだけど。
だからと云って、ただそれだけで妻にしようと思う筈もない。
わざわざ周囲の反対までをも押し切って、面倒な女と婚姻なんぞ結ぼうと思う筈もない。

――惚れていたのだ。本当は、ずっと…この女に。







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