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11.


…だから仕方ない。
前国王様の遺言に則って、あたしを娶ろうとしているだけに違いないのだ。
そう思うと酷く申し訳のない気持ちになる。
自分が酷く惨めに思えてくるのだ。
何も持たない自分のことが。
どうあってもこの方の隣りに立つにそぐわない己のことが。
そんなあたしの躊躇いと戸惑い、臆する気持ちを知ってか知らずか王様は、だから宰相達の息が掛かっていない分、例え本意であろうとなかろうと、お前を王妃にした方がまだマシなのだ、と。
うんざり顔で以って口にする。
(うわあ。それ、言っちゃいますか?幾ら本音でもあたし前にして、さっくりとそれ、言っちゃいますか?!)
あ…何気にキタわ、さすがに今のは。
ざっくり胸に突き刺さるレベルだわ。
なるほど。そーゆーことですか。
『まだマシ』レベルの女ですか、あたしって。
うーん、それって喜ぶところ?悲しむところ?
それとも怒っていいところ??
とは云え、相手はおうさま。
幾ら傷付いたとは云え、あたし如きが面と向かって口答え出来よう筈もない。
否。
それ以前に、本意でもないのにあたしなんかと結婚しようとしてくれていることに、むしろ感謝するべきところなんだろう。
(いやまあ全然嬉しくなんてないんですけどね?)
ガックリ項垂れるあたしのあたまを、不意にぽふぽふと撫でる小さな手のひら。
覗き込む翡翠。

「とにかく、俺ァ宰相達の望むどこぞの姫君も、ヤツらの息の掛かった胡散臭せえ貴族の令嬢も正妃に迎える気なんて一切ねえし、親父の遺言をなかったことにする気もねえ。…てことで、お前との結婚を取り止めるつもりはさらさらねえから覚悟しろ」
「覚悟…です、か?」
「ああ、そうだ。正妃として俺と共に、この国を…民を背負ってゆくだけの覚悟。それから、周囲からの圧力と干渉に耐える覚悟だ」

静かに語るその瞳は、恐ろしいほど真摯で、嗚呼…幼いながらにこのひとは、国を背負って立つ王様なのだ、と。
今更ながらにしみじみ思う。
感慨が湧く。






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あきゅろす。
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