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7.


――憂鬱である。
てゆーか、何かもう気が重い。
けれど選択肢なんて他にない。
否。
結局は、どの道を選んだところで、結果はひとつしかないのである。
落ちぶれた貴族の娘の末路なんてものは…。
でもまあそれは自業自得と云うものだ。
それに甘えて針の筵でしかないこの城の中に、無理を強いて留まることも。
未来ある王様の生真面目さへと付け込んで、のうのう王妃の座を頂戴するのも何だかとっても気が引ける。
どうにもこうにも良心が咎める。
そこまでして…とも思わない。
だから改めて居住まいを正したあたしは、宰相達から言われた通り、王様にこの婚姻の辞退を申し出た。
「必要だったら充分にあります。そりゃあ…亡くなられた前王様の遺言であり、悲願であったのは重々承知してますし、そのお気持ちは嬉しくもあります。屋敷を追われて身売りを覚悟していたところを、こうして助けて頂いて、感謝だってしています。ですが、やっぱりあたしじゃ身分が釣り合いません。ここはやはり、国の為にもおうさまご自身の為にも、おうさまと並んで遜色のない姫君だとか、良家のお嬢さまを正妃に迎えられた方が賢明かと…」
滔滔と諭すあたしに頬杖をつきつつ黙って聞いていた王様は、徐にフンと鼻を鳴らすと。
そいつァ、ジジイ共の入れ知恵か?と。
極冷淡な声で問うてきたから言葉に詰まる。
見据える瞳はすうと眇められ、まるで射るようにあたしへと向けられている。
(てゆーか、恐い)
…愛想はない。
十五と云う幼い年の割りには可愛げのない、元々しかめっ面ではあったのだけど。
今日のそれは比でないほどに、機嫌が悪い。
なんかもう、ものすっごく怒っている。
怒られているような気がしてならない。
況してや纏う空気までもがキリキリとした緊張を伴い、あたしはごくりと生唾を飲む。
「…で?仮に俺がお前の望み通り他の女を正妃に迎えるとして、お前はどうなる?側妃の座にでも納まると?」
肘掛に頬杖をついたまま、尚も意外なことを問われてほんの少しだけあたしは虚を衝かれた。
――側妃、って。
(いやいや、それは無理でしょう!)
「それでは新たな正妃様に顔向け出来ません!そりゃあもちろん、話が纏まった時点であたしは城を出ます!」
「出てどうする?屋敷は既に追い出された上、頼れる親戚もねえんだろ?」
「そ…れは、そうですけれど、宰相様が…」
「宰相のヤツがなんだって?」
「その、職でも嫁ぎ先でも見つけてやる、と…」
仰りましたので、と。
続けるまでもなく遮られた。
くつくつと低く響いた笑い声に。






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あきゅろす。
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