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3.


…だからですね?
あたしさえいなければ、隣国の姫を王子の妃に迎えて有益な同盟が望めたものを、と。
あからさまな陰口叩かれたところで、あたしにどうしろと?
有力貴族との縁談で、強力な後ろ盾が得られたやもしれぬと逆恨みされたところで、いったいあたしに何が出来ようか!
妬み、僻み、陰口に加えて。
せこいばかりのいじめに耐えつつ、今日まで理不尽な軟禁に耐えてきたのだ、あたしとしては。
それこそ、ふた月近くも耐えてきた。
理不尽すぎるこの軟禁にも、いじめにも。
…そりゃあ、身売りしなくて済んだことには感謝をしている。
あたしみたいな身分低い女に救いの手を差し伸べてくれた、わざわざ城へと保護してくれたことも。
配慮してくれたことも、本当にありがたいと思っている。
(だけどもう、充分じゃない?)
だってこのムチャ振りな結婚を目論んだ、前国王様はもうこの世にはいないのだ。
今更あたし如きと国民の前で盛大に式を挙げたところで、それこそ誰にも…何の得にもならない。
このお城の中、あたしを取り巻く周囲の誰ひとりとして望んでいない。
そんなことは誰の目にも明らかだった。
ゆえに、あたし自身も王様が亡くなられてから今日までずっと、周りからその手の圧力をかけられている。
曰く、――結婚自体を辞退しろ、と。
このひと月余り、それこそ耳にタコが出来るぐらい、宰相達から白紙撤回を諭されている毎日なのだ。
その間に、新たなお妃候補選びにも余念ないらしく、ここ最近のお城の中は、妙に浮き足立ってもいた。
そんな中。
引継ぎだなんだでものすっっごく忙しいだろうこのひとと来たら、暢気にあたしのところに顔とか出しちゃって…。
(あー、また後で文句言われたりするんだろうなあ。王様をたぶらかすような真似するな、とか。言われちゃうんだろうなあ、あたし)
いやいや、そんな真似してませんけどね!
むしろする気も起きませんけどね!!
面倒くさっ!と思いつつ、こうして部屋まで渡った王様を、よもや無下にすることも出来ず。
…仕方ない。
一応中へと迎え入れてはいるのだけれど。…だけれども。
(そんなに疲れているんだったらむしろ、自室でゆっくり休んだ方がいいんじゃないの?)
(てゆーか、むしろ帰ってください、今すぐに。そんでゆっくり寝てください)
そう思わないでもないのだけれど。
どうにも律儀なこのひとときたら、「暫く顔も出せないでいて悪かったな」と。
このひと月余りの不義理を詫びる始末ですよ、わーどうしよう!






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