SWEET PAIN 8
「う、…ら?」
「そ。ちょっと汚ねえけど、バックヤードなら椅子も机もあるんで、そこで半分こでも何でもして好きに食ってって下さいよ」
…って。
いやいや、そう簡単に言ってくれちゃってるけども、アナタ。
そーゆーのって、普通マズイんじゃないの?
そんなところにこの店の関係者でも何でもない、況してやただのお客でしかないあたしが勝手に入って行ったらダメなんじゃないの??
なのに黒崎少年は、尚も不可解なことを言う。
「ホントは部外者中に入れるとかマズイんですけど、乱菊さんなら多分オッケー。オーナーも下手に文句言った日には後々痛いしっぺ返し喰らうのわかってんだろうし、何も言わないと思うんで」
…って、なにーーーー!?
あ、あたしなら大丈夫ってそれ、いったいぜんたいどう云うことよ??
しかも、痛いしっぺ返しとか、オーナーも何も言わないって…、えええええ?!
「……な、なんでよ、それ?」
その不可解すぎる発言の数々に、あたしが疑問を抱くのも当然だろう。
だけど黒崎少年は、敢えてそれに答えることはなく。
ただ、ニッと笑って見せただけ。
挙句、「な、冬獅郎!」って。
とーしろーくんに何とも意味ありげな目配せを送っただけだからまるで意味がわからない。
(そしてそれにとーしろーくんは、何とも苦々しげな顔をして頷いてはいたのだけれど)
*
*
「ところで、時間は平気?松本サン」
改めて。
とーしろーくんに問われて、こくりと頷く。
「あと、それ、マジで俺ももらってもいいんですか?」
「あ、それはもちろん!大歓迎だよ!」
「なら、お言葉に甘えてありがたく」
ペコリと小さく頭を下げたとーしろーくんは、少しだけ照れ臭そうにはにかんで。
「んじゃ、こっちだからついて来て。…ああ、でもカゴ持ったままじゃさすがにマズイから、一旦棚に商品戻して後でまた選び直してもらうことになるけどいいッスか?」
問われて再び水飲み鳥の如く、こくこく頷く。
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