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SWEET PAIN 4


そうして手にしたモンブランの存在なんてすっかり忘れていたその矢先。

「モンブラン。買ってくんスか、松本さん?」

思い出したように問い掛けられて、はたと我に返る。
確かにさっきまでは寂しさいっぱい、虚しさいっぱいで、買って帰ろうと思っていたのだけれど。

「ん〜、せっかく今日は誕生日だし、ケーキのひとつも食べないのもさすがに寂しいかなあと思ったんだけどねー」
「って、松本さん今日誕生日?」

間髪入れずに突っ込まれて、しまったと慌てて口を噤む。
うわあ、もう!
今更バラすつもりなんてなかったのにー!!
ああ、でも「そっか、それはそれは…お誕生日オメデトウゴザイマス」って、期待してた言葉を希望通りにもらえてご満悦。

(うう、なんて最高の誕生日!)

あー、これでもうあたし、この先一年の『運』全部使い果たしたかもしんないなあ。
なあんて思って、内心ほくそ笑んでいたのだけれど。






「あ、じゃあ良かったらこれどうぞ」

そう言って。
目の前にズイと突きつけられたのは、日番谷少年が手に持っていた小振りな紙袋。
あ、これって確か美味しいって評判の隣町にあるケーキ屋さんの包装じゃない?と、気付いて口にするよりも先に、その紙袋をあたしの眼前へと突きつけ。

「これ、家帰って食おうと思ってさっき買ったヤツなんスけど、…良かったら」

誕生日プレゼントってことでどうぞ、と。
にっこり笑って予想外のことを言ってのけたから驚いた。
てゆーか、驚いたなんてモンじゃない!

「っちょ、ちょっと待ってよ!も…もらえないわよ、幾らなんでも悪いわよっ!!」
「や。これプリンなんで、そんな値の張るシロモンでもないし」
「だからって、とーしろーくんのプリンあたしが取っちゃったら悪いじゃない!」

うわあああ、うわああああ!!
本音を言えば、すごーく嬉しい。
おめでとうぐらい言ってもらえたら嬉しいな、とか思ってたけど、よもやとーしろーくんから「誕生日プレゼント」までもらえるなんて思ってなかったから。
だけどそれはとーしろーくんが自分で食べる為に買ったプリンで、しかも隣町の、それもちょっと名の知れたケーキ屋さんのものなのだ。
たまたまコンビニで顔を合わせただけのあたしが、ちゃっかりもらっていい筈もない。
そんなすっかり困り果ててしまったあたしの前に、「何やってんだよ、冬獅郎」と。
眉間に皺寄せ現れたのは、幾分呆れた様子の黒崎少年だった。







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あきゅろす。
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