SWEET PAIN 2
毎朝食べてるヨーグルトは別として、あたしがデザートの類を買って帰るのは、大抵新商品が出る火曜と相場が決まっているのだけれど。
…ケーキ、とか。
買って帰ったりしちゃおうかしら。
今日に限ってそんなことを思ったのは、他でもない――今日があたしの『誕生日』だったから。
尤も、誕生日だからと云って特別何があるってわけでもなければ、何があったってわけでもない。
何しろ今日は平日で、いつも通りに朝だって起きて、惰性のように会社に行って仕事して。
オマケに残業までして帰宅に至ると云う、まったく以っていつも通りの日常風景。
それでも時折友達だったり同僚だったり上司だったりに、誕生日おめでとうと声を掛けてもらって、お祝いのメールなんぞを貰ったりして。
ああ、そっかー。
今日ってあたしの誕生日なのねえ、なんて。
曖昧に思い出して感慨に耽ってみたりして。
その程度の付加価値しかない、むしろいつもと何ら変わらぬ一日だったから、せめて自分へのプレゼント!なーんて思ってはいそいそと、このコンビニに立ち寄ったのだ。
例え誕生日の今日、特別な『何か』がなくたって、あの子に会って、いつも通りの束の間のおしゃべりを楽しんで。
そのついでに「あのね、実は今日、誕生日だったりするのよーあたし」なーんて、もののついでにバラしちゃって?
あわよくば「マジッスか?おめでとうございます!」とか何とか言ってもらえたらいいな・とか。
ちょっと思っていたりもしてたんだけど。
そんな妄想してたんだけど。
(なんっっで今日に限ってシフトに入ってないかなあ?!)
*
*
うわ、もー信じらんない!!
てゆーか、サイッテー!!
ついてない、ホントついてないよ、今日のあたし…。
ガックリ肩を落として項垂れながら、そうしてあたしが手に取ったのは、今週出たばかりの新商品のスイーツで。
とーしろーくんが、「これ、すっげえおすすめ!」って言ってたプレミアムモンブラン。
その言葉通り、確かになかなかのお味だったから、昨日会った時はそれで随分と盛り上がった。
ああ、昨日はすっごく楽しかったなあ…なあんて思って、なんで昨日があたしの誕生日じゃあないのよう!などと理不尽なことを思わないでもないのだけれど。
つまり、既に一回食べてはいるのだけれど、…だけれども。
すっげえおすすめ!って言ってたニコニコ顔とか、昨日キャッキャと騒いだ時のはしゃいだ顔がどうにもこうにも思い起こされて、未練たらしくもカゴへ入れようとしてしまう辺り、あたしもアレよね?おバカよね?
相当あの子にヤラレてるわよね?
挙句、手にしたカゴにはビールが一缶にヨーグルトがひとつ、それからミネラルウォーターって…。
ちょっと、誕生日にどんだけ寂しい女よ、あたし?
そんな自嘲が俄かに浮かんだその時のことだ。
「ども、こんばんは」
突如背後から声を掛けられて、反射のように振り向いた先。
――目を疑う。
だって、そこには。
「っと、とーしろーくん?!」
学校帰りと思しき、制服姿のとーしろーくんが立っていたからに他ならない。
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