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こうして僕の恋は終わった 4



その瞬間、思い至ったのは窓の外。
件の少年のことに他ならない。
慌ててバッと目を走らせた窓の向こう、そこには食い入るようにこっちを見つめる少年の目が…。
(あっちゃー!!)
幸いにもカノジョの方はまるっきり気付いていないようだったけど、その肩を抱き寄せている彼の目は、まっすぐあたしと日番谷を見据えていたのだから堪らない。
「うわ、もお、サイアク!」
「つーか、何なんだよあのガキは」
いや、それ言ったらアンタも充分ガキの範疇だから・とは思ったものの、敢えて口には出さずにおいた。
八つ年下のこのコドモ、何気にあたしからガキ扱いされるのが気に食わないらしく、拗ねると後が面倒なのだ。

「ん〜、ちょっとねえ。少し前に告白されて、可哀想だけど断ったのよ。…ごめんネ、って」
「…相変わらずだな、お前」
「しょおがないでしょー、思春期真っ盛りの高校生男子の群れの中に、こーんなナイスバディのイイ女がいてみなさいよ。そりゃあ餌食にもされるってモンよ」
「ナルホドな」

わかったような口を利きつつも、腰へと廻されたその腕の力がゆるむような気配はない。
むしろ尚いっそう強く抱き寄せられて、あたしは大いに溜息を吐いた。



…部屋に戻ってからにして、なんて。


今更口に出したところでどうせ、聞き入れられることはないだろう。
わかりきっているからこそ、咎めるようなマネもしない。
何しろ嘗て生徒と教師であった頃でさえも、その手の願いが聞き入れられたことは皆無に近く。
時には授業の最中に、押し切られるようなかたちでこの硬く簡素なベッドの上で、幾度となく日番谷と肌を重ね合ったのはそう遠い過去の話じゃない。
首筋へと押し当てられる、ひんやり冷たい薄いくちびる。
白衣の下、ニットの上で轟く不埒な手のひらを、つくづく甘いなと自戒しつつも今度こそ振り払うことなく許容する。

「うわ。すっげ泣きそう、アイツ」
「誰のせいだと思ってんのよ」

窘めたあたしにくつりと笑い、窓の向こうを一瞥してから日番谷は、シャアッと音を立てカーテンを引く。
部屋の内と外とを明確に区切る。
さすがにこれ以上の行為を生徒の目に晒すのだけは勘弁願いたいと思っていたから、それにほんの少しだけ安堵して。
少しだけ翳った部屋の片隅で、再びくちびるを重ねてくちづけを交わす。

「ね。ちょっと…入り口の鍵、開いてんだけど?」
「バーカ。ンなモンとっくに閉めてあるっつの。ついでに『外出中』の札も出しといた」
「…用意周到」
「今更だろ?」

さっくり遮られては、浮かぶ苦笑。
ああもう、ホントに可愛くない。






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