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こうして僕の恋は終わった 2



乱暴に押し付けるだけの、拙いくちづけ。
間近に迫る、荒い呼吸。
時を置かずして我に返って、慌てて肩を押し退けて。
…待って。
お願いだから、ちょっと落ち着いてちょうだい、と。
傷付けまいと宥めすかしてから呼吸を整え、今尚収まることのない動揺すらも作り笑顔で補ってから、…ありがとう、と。
それから「ごめんなさい」を切り出した。
それは完膚なきまでの拒絶の言葉。
応える意思はないのだ、と。
笑顔で以って暗に伝えた。知らしめた。
その際見せた、傷付いたようなあの子の顔に。
暗く翳った青い瞳に。
ああ…やってシマッタ、と。
あたしの方こそが罪悪感に苛まれはしたのだけれど。


――今、窓の向こうのあの少年は、恐ろしく晴れ晴れとした顔で、歳相応のカノジョと語らい、これ見よがしにその肩を抱く。


相対するカノジョの方はと云えば、肩を抱かれて抱き寄せられて、極うっとりと身を委ねる。
そんなふたりを目の当たりにして…嗚呼。
(コレってもしかして、遠回しに見せ付けられてんのかしら?あたしって)
不意に思い至った時のことだ。






「なーにボケッと見てんだよ、テメエは」
「うおおう!!」

あたし以外誰もいるはずのない室内へと突如響き渡ったその声に、飛び上がらんばかりの勢いで以ってあたしは驚いたのだった。



「っな…!」
なんで、ここに?!と。
振り向きざま、その声の主に問い掛ける前に。
にゅうと伸ばされた長い腕へと後ろから羽交い絞めに抱き締められて、顎を捕られる。
そのまま深くくちづけられて、息を呑む。
「っちょ!…やめなさいってば!!」
強引なまでに深く口腔を犯すその傍らで、大きく開いた胸元付近――不埒に轟く大きな手のひらに気付いたあたしは、その手が襟を割り中へと侵入を果たす寸でのところで身を捩り、にんまりと笑う傍らの男をギロリとねめつけた。


「日番谷、アンタねえ…保健室はラブホじゃないって何べん言ったらわかんのよ!!」


今尚シャツの上から胸を弄ろうとする不届きな腕をぴしゃりと撥ね付け、一喝をくれはしたものの、生憎然したる効果の程は見られない。
尚もくつくつと喉を震わせ笑うこの男、無論、この学校の生徒ではない。
かと言って、同僚教師な筈もない。
まだ少し、幼さを残したしたり顔。
翡翠の瞳と銀色の髪。

「今更だろ、…松本センセ?」

そう言って笑うこのコドモは、この春この学校を卒業したばかりの元・生徒であり、在学中から今に至るまで現在進行形で付き合っているあたしのコイビトでもあった。






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あきゅろす。
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