夜の月、昼の月 1
※松本サイドにて、『日→雛』要素を含みますので要注意
気持ちを打ち明けるその前から、この『想い』は決して報われることはないのだ、と。
あのひとの副官たるあたしはちゃあんと知っていた。
何故ならあのひとには可愛い『あの子』が居るんだもの。
幼馴染みだと云う、優しく可憐な――雛森桃。
言葉にして確かめたわけではなかったけれど、そんなものは見ていればわかる。
隊長はあの子のことが好きなのだ。
例え雛森が見つめる先に、自分以外の男の姿があるのだとしても、好き…なのだ。
だから絶対、報われる筈がないとわかっていた。
それでも、今。
どうしても伝えたいと思ってしまったのだ。
「あなたのことが好きです」と。
零れ落ちた言葉は戻らない。
溢れ出す気持ちは止まらない。
もう、この気持ちを『冗談』なんかで誤魔化すことは出来なかった。
「上司としてではなく、一人の『男』として貴方を…日番谷冬獅郎を好きなんです」
ただの副官と思っていたであろう年上の女からの突然過ぎるこの告白。
予想通り隊長は面食らっている。
いつもは不機嫌に眇められている目付きの悪い翡翠の瞳を、零れんばかりに見開いている。
その、戸惑う様さえ愛しかった。
…けれど、やはり。
思ったとおり、返事は素気無いものだったけど。
「すまない」
苦渋に満ちた言葉は、真摯なだけに残酷だった。
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