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黄昏が夜になる 3


「いい加減に起きろ、松本…」

やわらかな金糸をそっと梳き、耳元に囁く。
――目覚めはしない。
だが、細い肩がふるりと揺れた。
松本は。
今は閉じられた深海の青にやがて俺の姿を映し、笑うだろう。
花開くように艶やかに笑い、いつものように俺の名前を呼ぶのだろう。
その、やわらかな唇で。
恐らく寝起きの声は甘く、掠れ、俺の耳を心地よく打つ。
そしてその細くしなやかな腕で俺を抱きとめ、見返りなんて求めない、ありったけの『愛』をただ一心に注ごうとする。

「大好きですよ」と。
「愛してます」と。

だが、決して言葉には出さず、この女はその身ひとつ、その心ひとつだけで惜しみなく俺に『献身』を捧げ、ただ笑うのだ。
…なあ、松本。
お前の与えてくれた深い『愛情』に気付くことも出来なかった、ただ邪険に振り払うことしか出来なかった情けない餓鬼のこの俺に、お前は己の『命』までも捧げるつもりだったのか?




「馬鹿な女…」


忠誠も愛も一緒くたにしやがって。
だが、今なら「放せ」なんて言わねえよ。
「うるせえ」なんて、邪険に振り払ったりもしねえよ。
いつもは為されるがままのその身体を、今度は俺がこの手で抱き返してやる、。
力の限り、抱きしめてやる。
そうして「お前が好きだ」と伝えよう。
他の誰よりもお前が大切なのだと言葉にしよう、今度こそ。
血色の良い唇にそっと近付き接吻けを落とす。
この腕の中にあるのは失えない『命』。
早く目覚めて俺を見ろ。
そして、笑えよ?
俺を見て、いつもみてえにあの綺麗な顔で笑ってくれよ。




…なあ、松本。





end.


「夕焼け〜」を書いたすぐ後ぐらいに書き上げたまま、延々放置してあった日番谷サイドをサルベージ。ゆえに、今と若干文章が違います(笑)
恐らく、日番谷が松本に心を移した過程が書きたかったんだと思いますが、余りに昔に書いたものなのであんまりよく憶えてません(w;。そして実は書きかけ放置の松本サイドまであったり;;
そっちもいつか公開できたらいいなあと思ったり思わなかったり…。(どっちだよ;)

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