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黄昏が夜になる 1

※日番谷サイドにて、『過去日→雛』要素を含みますので要注意



良く出来た副官だと思う。
尤も、仕事は大いにサボりがちだが。
それでも背中を預け、心を預け。互い感じる『信頼』は、どの隊にも負けないと云う自負がある。
――絶対の『信頼』。
こんな頼りねえ餓鬼の俺に自らの命まで捧げようとする松本を馬鹿な女だとは思うが、それ故に、それ以上に愛しいとすら思ってもいる。
…そう、愛しいのだ。



見下ろす先。
長椅子に横たわりすやすやと寝息を立てる松本の、流れるような金色の髪を一房掬い、指で梳いた。
それでも女は目を覚まさない。
瞼ひとつ、動かさない。
静かに、けれど規則的に隆起する胸。
薄く開いた、紅いくちびる。
何たる無防備。
隙だらけの女には、警戒心なんぞ欠片もない。
…心を預けるに、足りる。
それは上司として喜ぶべきことであるのだろう。
だが、こうして眠りに落ちる松本を見る度に。
松本の無防備な寝顔を見る度に。
俺は堪えようの無い、激しい焦燥に駆られるのだ。
――こんな『衝動』は初めてだった。



だから気付くのに時間が掛かった。
己の心の在り様に。
ともすれば、手遅れにすら為りかねなかったことを忘れてはならない。
俺の目の前で、虚の鋭い爪に裂かれた身体。
冷たい地面に横たわる、松本の隆起する胸、白い肌。
それらを染め上げる、鮮血の紅。
薔薇色をしていた筈の頬…血色の良い顔色が、みるみる内に青ざめていくのをどうすることも出来ないままに、ただ見守ることしか出来ない恐怖。





あの日、俺は松本を失いかけた。






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