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the EDGE of the WORD 3



本当なら。
あの人の隣りにいるのは、乱菊さんじゃなくてあたしだったんじゃないのかしら?
本当なら。
想いを告げられ想いを返し、寄り添い、共に生きて行くのは、あたしの役目じゃなかったのかしら?



そんな筈はないのだと、ちゃんと知っていながらまた傷つける。…どうして、と。
あのひとの与えてくれた優しさに、どうしてあたしは気付けなかったんだろう。
傷つけるばかりでどうしてあたしは日番谷くんに優しくしてあげられなかったんだろう。
与えられていた深い愛情に、失ってしまったものの大きさに、ただ、愕然と慄いた。
だからって…。


(今更欲しがったところで手遅れなのにね)



あの日、あたしを好きだと言ってくれた幼い日番谷くんのあの言葉を、もっと真摯に受け止めていれば良かった。あのとき流魂街を出なければ良かった。死神になんてならなければ良かった。藍染隊長を好きになんてならなければ良かった。きっと、そうすれば…今頃は。
ただ、詮のない後悔ばかりがあたしの中に満ちて、腐る。
幼いあの子は、もう、居ない。
あたしを好きだと言ってくれていた、幼いあの子は想い出の中に消え去ってしまった。
知りながら、未だ『思い出』に縋ろうとするあたしは無様だ。
それでもあたしは口にする。
あの日のあなたのように、繰り返す。
「だいすきだよ、日番谷くん」と。
何ごともなかったかのような振りをして、あの頃のように笑って伝えるあたしに、貴方は困ったような戸惑うようなかおをして。
「ああ、俺もだ」ってこたえてくれる日番谷くんは、だけどやっぱり背を向ける。
あの日と同じように背を向ける。
そして帰ってゆく。あのひとのもとへ…。
大きな大きな夕日の向こうに、溶け出していく消えてゆく…大きな背中、銀色の髪。夕日の中に、独り…置いてけぼりのあたし。
あの日と決定的に違うのは、あたしと日番谷くんの置かれた『立場』だけ。
今、この瞬間。
先に好きだと告げたのは『あたし』の方。
…困らせたいわけじゃなかったのに。
あの頃に戻れるなんて思っていたわけじゃなかったのに。
後悔しても、遠ざかる背中にはもう届かない。



「ごめんね、日番谷くん」




今日、また…再び、あたしは日番谷くんを傷つけた。




end.



日番谷を好きになれば良かったなって後悔する雛森とか…。
日雛なつもりは毛頭ないんだよ。日乱前提、過去日→雛で未来日←雛と云う変化球。色んな意味でやっちゃった感が否めないネタですんません。仮に『氷原に死す』の冒頭を日→雛と見るにしても、日番谷の「好き」の意味、きっとあの頃の雛森にはわかってねえんだろうなーとか思ったのです。ホントはねー、こんな可哀想な雛森は嫌なんですけど、まあ一度ぐらい書いてみても良かろうとガーッと一気に書き上げました。(※10/28加筆修正)

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あきゅろす。
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