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8.


「ね、とーしろー」
「んあ?」
「さっきの話」
「…さっき?」
「うん。あれね、あたしに男運ないのって、やっぱりアンタのせいだと思う」
「………はあ!?」


いったい何の話かと思ったら…。
まだ言うかよ、この女。
「つか、言い掛かりもいい加減にしろよ」
さすがに呆れ果てて言った俺に、だが松本は「言いがかりじゃないもん、ほんとのことだもん」と、尚も言い募る。


「あのなあ…お前に男運ねえのは、人の忠告無視してろくでもねえ男にばっかふらふらくっ付いてっちまうお前自身のせいであって、どう考えても俺のせいなわけねえだろが」
それは誰が聞いても立派な正論だと言えた。
だが、松本は納得しない。
そればかりかますますあかいくちびるを尖らせて「絶対ぜーったいに冬獅郎のせいなの!」と不貞腐れる始末だったので、俺はあんぐりと口を開けたまま唖然とした。
言ってる意味がまるでわからない。
(誰が聞いても言いがかり以外の何ものでもないと感じるだろう)
けれど、それでも…松本の様子が明らかにいつもと違うことだけはわかる。
なんだよ、今にも泣き出しそうなツラじゃねえか。



「…ンだよ。俺、お前に何かしたか?」
声のトーンを極力落とし、なるべく穏便に、且つ刺激しないよう伺うように問い掛けた。
きゅうと噛み締められたあかいくちびる。
思わず眉を顰めて、そっと指で払って嗜めた。
「馬鹿。噛むなよ、切れちまうだろ」
途端情けなく歪む松本の表情。目元が仄かに赤く染まる。
だから何で今日のお前はそんなに泣きそうなんだ?


ああ、畜生。
どうして俺の身体はこんなにも幼く小さいのだろう。
この腕はどうしてこんなにも頼りないのだろう。
こんな時に抱き締めてやることも安心させてやることも出来ない自分に苛立ちを募らせた俺は、だから一瞬、松本が今、何を告げたのかがまるで理解出来なかった。
だが。


「…まつ、もと?」
問い掛けながらゆっくりと見上げた先には、真っ赤に頬を染め、潤んだ瞳で俺を見つめる松本の弾力のあるやわらかなくちびるが。
その、くちびるが。
確かに今。
微かに、好き、と。
俺に向けて、告げられていた。




目を、見張る。
それからゴクリと喉が鳴った。
いつもの軽口、戯れに告げる他愛ない親愛の情に過ぎないと、受け流すことは出来なかった。
「なっ、んで。泣くんだよ…」
つと頬を伝って落ちた透明なみずが、ほたり、ほたりと俺の頬に温かな雫を落としたから。
不意に松本が流した涙に戸惑う俺に、松本は。

「とおしろーが、いちばん好き」と。
「ほんとうに、だいすきなの」と。

流れ出る涙もそのままに。
限りある、拙い、言葉で。
震える、あかい、くちびるで。
それこそ、何度も何度も繰り返し、松本は「好きだ」と俺に告げたのだった。







何だかまたも受け身な日番谷で、ドS好きの方にはほんとスンマセン;;(でも別に乱日ってワケでもないんだぜー!汗)
まあ、たいちょの設定が小学生なんでそこまで突っ走れないと云うか、まだ戸惑いの方が大きいんじゃねえの?と云うか。そんな、もやもやっとした感じがちょっとでも伝わればいいなと…(w;


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あきゅろす。
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