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4.


そんなあたしの脳裏を横切ったのは、当然ながら『別れ』以外の何ものでもない。
こういった場合、えてして選ばれるのは、決まって後から出てきた同い年のヒロインであると相場が決まっているからだ。
(そうね、あたしはさしづめ『引き立て役』って感じ?)
真打登場までの、仮初のヒロイン。
(まあ、高校生相手にヒロインて年でもないんだけど)
最後には立つ鳥跡を濁さずに、綺麗に幕を下ろして消え去る運命。
顔にもスタイルにも自信のある、遊び上手で物分りのいい大人の女…なーんて、如何にも役回りがお約束過ぎる。
だけど、所詮『遊ぶ』にはもってこいの年上女の立場なんてそんなもの。

(だって、ドラマでも小説でも漫画でも、こーゆー時に選ばれるのって同い年の女の子ってのが大概お決まりのパターンじゃない?)

わー、もう!
どう考えても、定番。定石。揺らぎない現実。
そりゃあそうでしょうとも、当然でしょうとも。
これから花開く同い年の年若い女と、満開を迎えて久しい年上の女のどっちを男が選ぶかなんて、火を見るよりも明らかだもの。
そりゃあ、笑って身を引くでしょうよ。
そうする以外にないでしょうよ、大人なんだから。
だいたい、他所へと心を移した若い男に未練たらしく縋る年上の女なんて、誰が見たってみっともないと思うだけだもの。
勝ち負けなんて、端からわかりきっているんだもの。
(それも、相手が高校生じゃねえ?)
まあ、どうせお互い本気だったってワケでもないし?
(てゆーか、無理矢理にでもそう思い込まなきゃ、惨めさが増すってもんよ)
それに、どうせこの子から別れ話を切り出すなんて出来っこないし?と思ってあたしはまたひとつ、ひっそり重たい溜息を吐く。
(ああ、だから年下って嫌なのよ)
高校生ってのは論外にしろ、今度付き合う男は絶対年上にしよう。
それもできるだけ場数を踏んだ、恋愛慣れした男がいいわと、今更ながらに心に誓う。
そうしてあの子の話が途切れたところで、あたしは徐に切り出した。


「ああ、そうだ。前から言ってた部屋の鍵、やっぱりあんまり調子良くないし、今度取り替えることになったのよね。…てことで、アンタに渡してある合鍵も返してちょうだい」





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