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3.


そんな関係が一転したのは、二度目の夏の終わりを迎えて間もなくのことだ。
夏休み明け、件の少女とこの子の席が隣同士になったことで、少しずつ何かが変わっていった。
席替えのあった当初こそ、やれ鬱陶しいだのやかましい女だの文句ばかり言ってた癖に、いつの間にやら懐柔されていて。
ひと月も経った今では、すっかりひとが変わったようでもある。
その捻くれた性格と奇異な容姿から、級友達に馴染むこともなくいつだって皮肉に笑っては、老成をした落ち着きを見せていた陰りある筈の少年の面差しは、今、その顔からは窺えない。
そういえば、その子を介して他のクラスメイトにも最近ではだいぶ馴染んできたらしく、以前ほどこの部屋に入り浸ることもなくなっていた。

(これもその女の子のおかげなのかしら?)

疎外感を感じるばかりで家にも学校にも居場所が無いから、と。
ある種逃げ場にもなっていたあたしの部屋も、ついでに部屋の主であるあたしも…あたしのからだも、そろそろ不要になってきたと云うことだろう。…恐らくは。
そう思って溜息を漏らす。ひっそりと。
まあ、こんな不健全極まりない戯れが、そうそういつまでも続くはずがないものね。
いずれ…そう遠くない未来、こーゆー日が来るかなあ?ってことぐらい、とっくにわかっていたことなんだものね。


狭いアパートの狭いベッドに、裸でふたり、寝転んで。

顔も知らない女の子のことを話題にしては笑うあたし。

あたしの知らない女の子のことを話題にしては笑うコドモ。


その目に映るのは、今抱いたばかりのあたしではなくて、恐らく…きっと、クラスメイトのその子のこと、で。
…ほら。
いつものように、その手が、そのくちびるが。
再びあたしを求めることはない。
だからやっぱりチェックメイト。
これ以上は手詰まり・ってことなんだろう。
そう思って、再び吐き出す。溜息を。





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あきゅろす。
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