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アフターダーク 3


「つか、走ったら胃が気持ちワリィ」
「ンなもん、お前…あれだけバカスカプリンだのケーキだの食ってりゃ当然だろが」


ああ、それからもうひとつ。
ヤツには彼女に知られてはならない『秘密』がある。
大きな声じゃあ言えねえが、実は冬獅郎は甘いものが滅法苦手なのだ。
なのに甘いもの好きのフリをして、毎週火曜には新商品のデザートの類をひと通り買い集めては無理矢理のように試食して、乱菊さんとのコミュニケーションに活かしているのだ。
(つか、ありえねえ!!)
そのアホらしくも涙ぐましい努力に、普段学校でのヤツを知る俺としては何とか上手く仲を取り持ってやりてえと思っていたりもするのだが、何しろ相手は7つ年上。しかも、OL。社会人。
それも、とびきりのお姉さまときているのだから、何をどう取り持てばいいのやらからしてもう既にわからない。
(そもそも7つも年上の大人の女が、こんな高校生のガキ如きにそう簡単になびくかっつーの!)
また、そこは冬獅郎としても思うところがあるらしく、ゆえに、なかなか告白できないでいる始末だった。


――だが、それでも。


こうして毎日のように店へと顔を出す乱菊さんを見ていると、案外脈アリなんじゃねえの?と実は思い始めてもいて…。
(つか、どう見てもあからさま過ぎんだろ!)
並ぶレジが絶対冬獅郎、とか。
アイツに見せるあの笑顔とか。
だからさっさと告っちまえよと煽ってみても、ヤツにしてみればその『一歩』が今ひとつ踏み出せないでいるらしい。
全く以って、もどかしいことこの上ない。




「安心しろ。仮にお前が玉砕したって、骨はちゃんと拾ってやっから」
「バッ…!縁起でもねえこと言うんじゃねえ!!」


口に含んだアクエリアスを噴出しかけて、辛うじてごくりと飲み干したヤツは、それから「…ハァ」と重たい溜息をひとつ、吐き出すと。
「…ジュースの補充、行ってくる」
力無く言って。
再びレジを出たかと思うと、ウォークインへと向けてのろのろとした足取りで歩き出す。




今日のバイトが終わるまで、残りあと1時間と45分。
――また、明日。
ヤツが彼女に会える時間まで、およそ23時間と45分。
その、僅か5分にも満たない明日の邂逅を、ただひたすらに待ち侘びながら。




end.

その後ネタとしては随分前から頭の中にあったのですが、まあ…そんな感じで実は両片想いなんですよ〜的ないつも通りの日乱オチです(笑)
日番谷くんがちょっと頭の痛い子ですみません☆でも片想いの年上のお姉さんのためにそんな無茶とかしてたらちょっとアホ可愛いかなあと思って密かに妄想してみた次第(w;

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あきゅろす。
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